海外赴任時に、証券口座はそのまま継続可能?証券会社ごとの対応を解説
「急に海外赴任が決まった!」「持っていた証券口座はそのまま継続できる?」と、国外転出が決まり、証券口座の管理について困っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論としては、ほとんどの証券会社では口座は維持することができません。しかし、証券会社によっては条件を満たす場合に所定の手続きを経て口座を保有できる場合があります。特に、ネット証券会社では比較的柔軟な対応がされています。
今回は、7つの証券会社を例に、口座維持の可否や保有できる商品や売却が必要な商品などを詳しく解説します。また、新たな海外生活を始めるにあたって、海外送金や外貨での買い物など便利に使えるWise(ワイズ)についてもご紹介するので、ぜひチェックしてください。
海外赴任中に、証券口座はそのまま維持できる?
基本的には、海外赴任で国外転出をして日本の非居住者となる場合、口座を維持することはできずに廃止手続きが必要になります。これは、日本の証券会社が日本国外での金融商品取引業務を行う許可を得ておらず、渡航先の国の法令に抵触する可能性があるためです。
ただし、証券会社によっては所定の手続きを経ることで条件付きで口座を維持できるものもあります。これは、渡航先の国や滞在期間によって制限が異なります。ただし、証券口座を継続保有できたとしても、売買等の取引に関しては制限がかけられるため注意が必要です。
自分が日本の居住者になるのか、非居住者になるのかという定義は次の段落をご参考ください。
居住者・非居住者の定義
「自分は居住者?非居住者?」と迷ってしまう方に向けて、国税庁の情報を基に定義を明確にしましょう。日本の所得税法では、以下の通り規定されています。
居住者:国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人
非居住者:「居住者」以外の個人
住所:「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」
居所:その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所
居住者、移住者の判定が分からない場合は、自分で判断することなく、税務署や税理士等の専門家のアドバイスを受けてしっかり確認するようにしましょう。
証券会社ごとの対応一覧
海外赴任中の証券口座の維持に関しては証券会社によって対応が異なります。主要な証券会社7社それぞれの対応を表で確認していきましょう。
次の章では、各証券会社ごとの海外赴任時にどのような対応が具体的に必要かを続けて解説していきます。
企業名 | 口座維持 | 国内株式 | 国債 | 投資信託 | 外国株 |
---|---|---|---|---|---|
楽天証券 (ネット証券会社) | ⭕️ *(1) | ⭕️ *(2) | ⭕️ | ✖️ | ✖️ |
SBI証券(ネット証券会社) | ✖️ *(6) | ⭕️ | ⭕️ | ✖️ | ✖️ |
auカブコム証券 (ネット証券会社) | ⭕️*(3) | ⭕️*(3) | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
三菱UFJ・モルガン・スタンレー証券 | ✖️*(4) | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
SMBC日興証券 | ✖️*(4) | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
マネックス証券(ネット証券会社) | ✖️*(5) | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
松井証券 | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
先に述べたように、原則として海外赴任や海外移住が決まった場合には口座を維持することができません。そのため、ほとんどの証券会社では口座の閉鎖が求められます。しかしながら、なかには条件を満たす場合には取引に制限はあるものの、口座を維持できたり、継続保有できる商品があったりと、柔軟な対応をしている証券会社もあるようです。
海外赴任時、楽天証券の口座に必要な対応
楽天証券では海外赴任等で出国が決まった場合、出国期間によって手続きが必要かどうかが異なります。
口座維持:個人口座のみ。1年未満の場合は手続き不要で継続取引が可能。 *
*渡航先がアメリカの場合、滞在日数により手続き要。
口座継続条件:
出国日から5年以内に帰国予定であること。
保護預り残高があること。
常任代理人の選定、および常任代理人契約書、常任代理人選任届を楽天証券で受理されていること。
書面交付の同意
ご出国日の前日までに必要書類をすべて楽天証券で受理されていること。
保有できる商品:ETF・REIT等を除く国内株式および個人向け国債
売却が必要な商品:
国内株式(信用取引)
国内ETF、REIT など
外国株式(現物取引・信用取引)
海外ETF
投資信託
外貨建MMF
債券(個人向け国債以外の債券)
楽ラップ
デリバティブ(FX、バイナリーオプション、CFD、先物など)
金・プラチナ・銀
手続き方法:手続きが必要な場合は、出国後に保有できない商品の売却、常任代理人を選任、届出書等の提出などが必要になります。詳細は楽天証券の「海外出国のお手続き」をご確認ください。
海外赴任時、SBI証券の口座に必要な対応
ネット証券会社では人気ナンバーワン* を誇るSBI証券。SBI証券では「非居住者」の定義を定めており、加えて居住先の国との租税条約や現地法も加味した上で「居住者」か「非居住者」なのかが確定されます。
* 価格.com 証券会社(ネット証券)口座比較(参照:2024年9月17日)
口座維持:NISA口座・つみたてNISA口座・ジュニアNISA口座・特定口座は閉鎖。海外への「永住者」は証券総合口座の閉鎖が必要。
口座継続条件:一時的な出国の場合、所定手続きを行うことで保有可能商品のみ預かりが可能。帰国後は所定手続きを以って、取引制限が解除。
保有できる商品:日本株式および日本国債のみ
売却が必要な商品:外国証券や信用取引・先物オプション取引などの証拠金取引等の建玉等
手続き方法:出国前にSBI証券カスタマーサービスセンターへ電話の上、書類を請求して書面の提出が必要です。詳細はSBI証券ウェブサイト「海外に行くことになりました。取引は継続できますか?」ページをご確認ください。
海外赴任時、auカブコム証券の口座に必要な対応
auカブコム証券でも、「非居住者」に関して定義を定めています。口座継続条件を満たす場合には、国内株式(現物)のみを保有することができます。
口座維持:一定の条件を満たす場合、所定の手続きを以って口座凍結の上、保有できる商品のみの預かりが可能。(口座維持は可能だが、取引・出金は不可)
口座継続条件:
出国期間:出国日から3年以内に帰国予定であること(出国予定期間が3年以上、期間未定、永住の場合は口座継続不可)
保有残高:国内株式(現物)の預り残高があること
手続期日:出国日1週間前までに必要書類がすべて受理されていること
保有できる商品:国内株式(現物)のみ
売却が必要な商品:国内株式(現物)以外の商品
手続き方法:必要書類を出国日の1週間前までに必着にて送付。国内株式(現物)以外の商品の売却・返済。積立プランの中止および貸株の返却。詳細はauカブコム証券「海外出国・帰国手続」ページをご確認ください。
海外赴任時、三菱UFJ・モルガン・スタンレー証券の口座に必要な対応
三菱UFJ・モルガン・スタンレー証券の場合は転勤等で海外へ転居する場合、原則として口座は解約しなくてはなりません。
ただし、条件付きで口座を継続することも可能です。詳細は取引店へご確認ください。
海外赴任時、SMBC日興証券の口座に必要な対応
SMBC日興証券では、日本国内の居住者ではなくなる場合、取引店へ連絡のうえ、原則として口座の解約が必要です。
所定の手続きを経てSMBC日興証券の承認を得られた場合には制限の範囲内で口座の維持が可能です。詳細は取引店へへご確認ください。
海外赴任時、マネックス証券の口座に必要な対応
マネックス証券でも、「非居住者」として定義が定められているので、事前に確認しましょう。原則として海外へ出国する場合は口座解約が必要ですが、マネックス証券が認める範囲内で「休眠口座」として口座継続ができます。
口座維持:原則、長期間出国する場合は保有残高を全て売却後、出金のうえ、口座解約が必要。特定口座や非課税口座(NISA)は廃止*。 保有残高の売却ができない事情がある場合、休眠口座として口座維持が可能。
口座継続条件:マネックス証券が認める範囲内で「休眠口座」として口座継続が可能。手続き書類の請求および詳細については、コールセンター(お客様ダイヤル)まで
売却が必要な商品:信用取引やFXなどの建玉や外国商品など
手続き方法:手続きについては「入力フォームからの質問」より出国先および出国予定日を記載の上、お問い合わせください。
* マネックス証券では、25年春から海外赴任でもNISA継続可能になる旨の報道がありますが、本記事の公開時点(2024年9月)では継続利用はできないとされています。
海外赴任時、松井証券の口座に必要な対応
松井証券では海外に1年以上移住または暮らす予定がある場合および期間の定めのない海外転勤、海外留学は「非居住者」として定義されています。
「非居住者」に該当する場合、特定口座は継続利用できません。保有する株式は一般口座へ振替え、特定口座を閉鎖する必要があります。
必ず出国前までに、松井証券顧客サポートまで必要な手続きに関してご確認ください。
海外赴任の海外送金・お金の管理に便利なWiseアカウント
証券会社での手続き以外にも、海外赴任時には渡航先での生活を開始するためにさまざまな手続きが必要になります。特に「お金」の管理については、新生活をスタートするにあたって最も懸念事項と言えるのではないでしょうか?
イギリス発の金融テクノロジー会社であるWise(ワイズ)では、安くて早い海外送金をはじめ、マルチカレンシー(多通貨)口座で主要通貨である米ドルやユーロ、英ポンドはもちろん、10種類の現地口座情報を取得できる海外生活の大きなサポートとなるサービスを提供しています。一つアカウントを作成しておけば、アカウント内で40種類以上の通貨の保有ができ、アカウントに紐づくデビットカードを持つこともできます。
Wiseは銀行ではありませんが、銀行口座の代わりに日本との送金のやり取りや、国際ブランド搭載のデビットカードで毎日の買い物など、移住したての慌ただしい日々でも安心して利用することができます。
現住所によってサービス内容が若干代わりますが、国によっては利息が付いたり、株式として保有できる場合もあります。詳しくは、Wiseウェブサイトから移住する国を選択し、対応サービスをご確認ください。
なお、渡航後に役所での住民登録が完了したら、Wiseのカスタマーサービスに連絡して住所を日本から海外住所へ変更しましょう。
まとめ
楽天証券をはじめ、ネット証券会社の方が比較的、非居住者に対しても柔軟な対応がされていることが分かりました。証券会社によって、独自に「居住者」「非居住者」を定義していることがあります。海外赴任が決まったら、必ず利用している証券会社に確認しましょう。
海外赴任時には日本および渡航先でのさまざまな手続きが必要になります。そんなとき、少しでもお得かつ便利に使えるWiseアカウントを持っていると、海外送金や毎日の買い物にもストレスなく新生活を始められます。アカウントは無料で開設できるので、海外移住予定の方には持っていて損はありません。興味のある方は、ぜひ検討してみてくださいね。
出典:
海外送金の受け取りに関してよくある質問
海外から日本の口座で外貨送金を受け取るには、次の情報を英文で送金人に伝えてください。銀行名、支店名、支店住所、スイフトコード(SWIFT code)、ビックコード(BIC code)、国名、受取人口座番号、受取人名、受取人の電話番号、(必要な場合)中継銀行の情報が一般的に必要になります。
海外送金の受け取りの限度額は銀行によって異なりますが、みずほ銀行や三井住友銀行ではともに受取上限額はないとされています。各銀行へ事前にご確認ください。