100万円以上の海外送金は小分けにする?一括で高額送金できるサービスを紹介
海外留学や海外不動産売買、移住、相続など高額なお金を海外送金する必要があるという方もいらっしゃるでしょう。近年では、海外送金サービスで手軽に海外送金できるようになりましたが、その多くは送金上限額が100万円相当額までで、それ以上の金額は小分けして送金するしかありません。
しかしながら、海外送金サービスのWise(ワイズ)のように100万円以上の高額送金にも対応している金融サービスも存在します。銀行での送金も安全性や信頼面でメリットがありますが、高額送金に対応している海外送金サービスでも高い安全性を保証しながら、一括で高額送金でき、銀行よりもコストを削減することも可能です。一括送金することで、複数回分の手数料が不要で、割引が受けられるサービスもあります。
本記事では、100万円以上の海外高額送金に対応している銀行や送金サービスをご紹介します。複数のサービスの手数料や利便性を考慮、比較した上でニーズに合ったサービスを選択しましょう。
一括で100万円以上の高額送金を行うには、第一種資金移動業の認可が必要
近年、銀行に加えて、金融機関以外でも海外送金を取り扱うサービスが台頭しています。これを「資金移動業」と呼びます。資金移動業者として日本で営業するには、金融庁より認可・登録を受ける必要があります。
資金移動業者には「第一種資金移動業」、「第二種資金移動業」、「第三種資金移動業」の3種類があります。そのなかでも「第一種資金移動業」だけが100万円超の高額送金の取り扱いが許可されています。
第一種資金移動業とは?
「資金移動業」として営業するには、資金決済に関する法律に基づき、事前に財務(支)局長の登録を受けなければなりません。
令和3年(2021年)5月1日施行の改正資金決済法改正により、資金移動業では取り扱うことのできる送金金額等に応じて「第一種資金移動業」「第二種資金移動業」「第三種資金移動業」の3つの種別に分類されました。
第一種資金移動業と第二種資金移動業の違いとは?
多くの海外送金サービスは第一種または第二種資金業として運営されています。
第一種資金移動業と第二種資金移動業には、以下のように規制範囲が定められています。
第一種資金移動業 | 第二種資金移動業 | |
---|---|---|
送金上限額 | 上限なし | 1件あたり100万円以下 |
登録、認可等 | 資金移動業の登録、業務実施計画の認可 | 資金移動業の登録 |
利用者資金の滞留 | 原則滞留不可(注1) | 滞留可(注2) |
利用者資金の保全方法 | 1.供託、保全契約、信託契約で全額保全 2.営業日ごとに要履行保証額を算定し、2営業日以内に保全 | 1.供託、保全契約、信託契約で全額保全 2.週に1回以上要履行保証額を算定し、3営業日以内に保全 |
(引用:財務省 関東財務局)
両者の大きな違いは、海外送金の限度額です。第二種資金移動業では1件あたりの送金上限額が100万円以下に制限されていますが、第一種資金移動業では100万円を超える高額送金も一括で取り扱うことが可能です。
また、第一種資金移動業には、運営会社が破綻等した場合に利用者に与える影響が大きいことから、第二種・第三種資金移動業よりも厳格な資金の滞留規制が課されています。
100万円以上の一括海外送金が可能なサービスは?
2025年6月30日現在、金融庁から第一種資金移動業として認可・登録を受けている企業は、以下の5社となります。
Wise(ワイズ):ワイズ・ペイメンツ・ジャパン株式会社
KYODAI Remittance(キョウダイレミッタンス):株式会社ウニードス
EXPARO(エクスパロ):株式会社シースクェア
Nium(ニウム):NIUM Japan株式会社
株式会社アイビーネット
そのなかでも、Niumは法人向けに送金インフラを提供しているフィンテック企業であり、日本で個人が直接利用することはできません。また、Niumは海外送金のInstarem(インスタレム)を運営していますが、Instaremの送金上限額は100万円までとなっています。株式会社アイビーネットは米国不動産担保ローン事業に特化しており、送金の用途が不動産関連に限定されます。
そのため、個人・法人の両方で100万円超の一括海外送金が可能なのは以下3社となります。サービス内容を表で確認していきましょう。
サービス名 | 対応国・通貨数 | 適用レート | 送金手数料 | 高額送金の割引 | 送金上限額 |
---|---|---|---|---|---|
140カ国、140の通貨の送金に対応 | 手数料上乗せなしのミッドマーケットレート | 0.73%〜 *(1) | あり | 最大1億5千万円相当額まで | |
KYODAI Remittance Plus(キョウダイ・レミッタンス・プラス) | 4カ国(インドネシア、ベトナム、ネパール、ペルー)、4 通貨 | ウェブサイトで確認可能(参考値) | 一律 5,000円 | なし | 【個人】 ・遺産相続、不動産投資:1,000万円 ・資産移転、貿易決済、その他:500万円 【法人】 ・貿易決済、出資、経費等:1,000万円 |
EXPARO Bix. | 韓国・韓国ウォンのみ | TTMレートに所定の為替ざやを加算したもの *(1) | ・10万円以下:2,500円 ・10万円超過~100万円以下:3,500円 ・100万円超過:通常4,000円 | あり | 最大3,000万円まで |
(2025年8月6日現在)*(1) 送金金額によって変動。シミュレーターから確認可能
上記3社のサービスについて、詳しく見ていきましょう。
Wise
海外送金大手のWiseは、2023年に第一種資金移動業(関東財務局長第00040号)として認可・登録を取得しました。これにより最大1億5千万円までの高額送金が可能になりました。
従来の100万円相当額までを上限とするWiseの海外送金で提供されているミッドマーケットレートの適用や幅広い外貨の取り扱いはそのままに、隠れコストのない透明性のある料金体系での高額送金を実現しています。
サービスの特徴
Wiseの送金対象国は140カ国、対象通貨は40種類以上と、さまざまな国や通貨での送金が可能です。また、為替手数料の上乗せのないミッドマーケットレートの適用も、Wiseの大きな特徴です。これにより、為替手数料で損をすることがありません。
Wiseの高額送金の限度額は、今回ご紹介する3社の海外送金サービスのなかでは最高額の最大1億5千万円まで取り扱いです。さらに、Wiseの高額送金では、一カ月あたり20,000 GBP(または相当額)以上を送金すると、超過分に対する手数料に自動割引が適用されます。具体的にどのくらい割引が適用されるかは、シミュレーターで確認することができます。
送金手順
Wiseで高額送金するには、まず会員登録および本人確認手続きが必要です。そのうえで、次の手順で送金手続きを作成できます。
ホーム画面から「送金する」を選択する
銀行振込からの入金を選択する
受取人情報を正しく入力する
必要書類をアップロードする
送金内容を確認する
入金元の口座に関する質問に回答する
Wiseの銀行口座へ資金を入金する
高額送金をスムーズに進めるには、あらかじめ必要書類を手元に用意しておくことが重要です。提出が必要になる書類については、この後詳しく解説します。
また、Wiseの高額送金の場合、送金資金となる資金の入金方法は銀行振込のみが有効です。銀行によっては一日あたりの振込上限額が定められているため、あらかじめ振込上限額を確認しておくと良いでしょう。
必要書類
資金源の証明を求められた場合には、下記情報が載っている銀行取引明細書が必要です。
送金人名と口座番号
送金人口座への入金履歴
送金人の口座からの出金履歴(Wiseへの入金取引)
(該当する場合)その他の口座間での入出金履歴
銀行取引明細書のほか、資金源によっては以下の書類の提示が求められます。
送金目的 | 必要書類の例 |
---|---|
不動産売買 |
(書類例)売買契約書、決済明細書等 |
相続 |
(書類例)検認証明書、遺言等 |
給与 |
(書類例)雇用契約書、3カ月分の給与明細等 |
投資 |
(書類例)証明書、取引明細等 |
ローン |
(書類例)証明書、取引明細等 |
(2025年8月7日現在)
Wiseの高額送金のメリット・デメリット
Wiseのメリット | Wiseのデメリット |
---|---|
✅ミッドマーケットレートの適用 ✅最大1億5千万円までの高額送金が可能*(1) ✅40通貨以上に対応 ✅高額送金に対する手数料割引の自動適用 | ❌送金額や通貨によって手数料が変動 |
*(1) 日本の住所でWiseに登録している場合
Wiseの高額送金では40以上の通貨に対応し、ミッドマーケットレートを適用して送金手数料を抑えることができます。送金上限額は最大1億5千万円まで対応しており、一カ月あたり20,000GBP(または相当額)以上を送金すると、超過分に対する手数料に自動割引が適用されるメリットがあります。一方、送金額や通貨によって手数料が変動する点がデメリットと言えるでしょう。
KYODAI Remittance Plus
ブラジルやペルーといった南米や東南アジア圏への送金に強みがあるKYODAI Remittance(キョウダイレミッタンス)。運営会社の株式会社ウニードスは、2023年に日本で初めて第一種資金移動業として認可を取得しました。100万円超の高額送金サービスは、KYODAI Remittance Plus(キョウダイ・レミッタンス・プラス)として提供されており、法人の海外取引や個人の不動産投資、資産移転などのニーズにも対応しています。
サービスの特徴
KYODAI Remittance Plusでは、KYODAI Remittanceの強みである以下の国を対象に銀行圧倒的に安い手数料で100万円超の高額送金を実現しています。
送金対象国:インドネシア・ベトナム・ネパール・ペルー
送金手数料:一律 5,000円
為替レート:所定の為替相場(処理時に確定)
送金目的別金額上限
送金目的 | 送金上限額 | |
---|---|---|
個人 | 遺産相続、不動産投資 | 1,000万円 |
資産移転、貿易決済、その他 | 500万円 | |
法人 | 貿易決済、出資、経費等 | 1,000万円 |
(2025年8月6日現在)
送金手順
KYODAI Remittance Plusの利用には、事前審査があるため、利用を検討している場合は余裕を持って申し込みしましょう。
KYODAI Remittanceの会員申込をする
海外送金の申告に必要な書類や送金実行希望日をメール([email protected])で連絡する
サービス開始以降、1~2日後に承認結果の連絡を経て海外送金が実行される
必要書類
KYODAI Remittance Plusでは、高額な海外送金の手続きにおける必要な書類がウェブサイト上で詳細に記載されていません。しかし、一般的には資金移動業者はマネー・ローンダリング規制や犯罪収益移転防止法により、以下の書類の確認が義務付けられています。
マイナンバー(個人番号)
送金目的を証明する書類(請求書・学校の入学許可証など)
原資を証明する書類(給与明細・通帳の写しなど)
KYODAI Remittance Plusの高額送金のメリット・デメリット
KYODAI Remittance Plusのメリット | KYODAI Remittance Plusのデメリット |
---|---|
✅一回あたり100万円超、1,000万円までの高額送金が可能 * ✅独自の送金インフラにより、最短当日の着金が可能 ✅手数料が一律5,000円と銀行より格安 | ❌送金対象国が4カ国と少ない ❌為替レートが不透明 |
*送金先・送金目的により上限額は異なる
KYODAI Remittanceは世界各国の銀行や金融機関との提携により、独自の送金インフラを確立しています。第一種資金移動業の送金対象国はインドネシア・ベトナム・ネパール・ペルーの4カ国に限定されていることや、送金先国・送金目的により上限額が異なることに注意が必要です。
EXPARO Bix.
EXPARO Bix.は、韓国への高額送金ができる法人向けサービスです。
従来のEXPAROは「第二種資金移動業」として送金額の上限は100万円までとなっていますが、EXPARO Bix.では「第一種資金移動業(関東財務局長第00018号)」として1回あたり最大3,000万円までの韓国送金を取り扱っています。
サービスの特徴
EXPARO Bix.の送金対象国および送金通貨は韓国・韓国ウォンのみとなり、韓国国内の銀行口座および証券会社の口座への送金が可能です。
EXPARO Bix.では、「より速く、より安く、より便利に」を目標として、手続きの簡素化に努めています。会員登録から送金完了までは、すべてオンラインで完結。営業日の18時までに送金申し込みと入金確認が完了した場合は、最短当日中に韓国口座へのスピード入金が可能です。
送金手順
EXPAROとEXPARO Bix.は同じ運営会社ですが、従来のEXPAROに会員登録していた場合でもEXPARO Bix.への会員登録が必要です。
EXPARO Bix.へ会員登録をする
本人確認手続きを完了する
送金申し込み
申し込み内容の確認がされる
指定口座へ入金する
入金確認後に送金手続きが実行される
なお、会員登録を済ませた上で、新宿本店窓口での送金手続きも可能です。
必要書類
EXPARO Bix.では、日本の法令および韓国の関係法に基づき、10万円を超過する商品の購入やサービス利用、商取引を目的とした送金については取引の証明となる請求書の提出が求められます。具体的には、以下の送金目的において10万円を超える場合、請求書が必要です。
学費・治療費
商品購入代金
サービス利用代金
不動産購入・投資
EXPARO Bix.の高額送金のメリット・デメリット
EXPARO Bix.のメリット | EXPARO Bix.のデメリット |
---|---|
✅一回あたり最大3,000万円まで・年間最大5億円までの韓国送金が可能 ✅送金手数料は2,500円~4,000円と銀行よりも低コスト ✅当日18時までの入金確認で最短当日着金 ✅100万円超過の送金はレート優遇あり | ❌対応国・通貨が韓国・韓国ウォンのみ ❌最大3%の為替手数料を上乗せしたレートが適用 ❌ウォンの受取額指定をする場合、0.5%の上乗せレートが適用される |
第二種資金移動業者として2011年以降、韓国送金の実績があるEXPARO。韓国の大手銀行との提携により、送金手数料は2,500円~4,000円と大手銀行よりも低コスト。一回あたり最大3,000万円の送金が可能で、小分けにして送金する手間なく、高額な韓国送金を実現しています。ただし、送金対応国・通貨は韓国・韓国ウォンのみに限定されています。また、為替レートは最大3%の為替手数料が含まれており、不利になる可能性も考慮する必要があるでしょう。
海外送金の限度額とは
海外送金(仕向送金)の限度額とは、銀行や海外送金サービスなどの金融機関が規定する送金の上限額です。一回あたり、一日あたり、一カ月あたりなど日数によって上限額があったり、インターネットバンキングや窓口などの手続き方法によっても上限額が異なったりします。
なお、日本の外国為替及び外国貿易法(外為法)第55条により、輸出入貨物代金以外の1回あたりの海外送金額または受け取り額が3,000万円相当額を超える場合、日本銀行宛に「支払又は支払の受領に関する報告書」を報告する義務あります。手引きや書式のダウンロードは、日本銀行ウェブサイトをご確認ください。
海外から日本への送金限度額は?
海外から日本への送金限度額(被仕向送金)は、海外の金融機関の送金上限額や日本の受け取り側の金融機関の受け取り上限額によって異なります。
例えば、三井住友銀行では受取限度額は設けられていません。ただし、海外送金時と同様に、3,000万円相当額を超過した受け取りの場合にも、日本銀行宛に「支払又は支払の受領に関する報告書」の提出が義務付けられています。手引きや書式のダウンロードは、日本銀行ウェブサイトをご確認ください。
100万円以上の海外送金をする際の注意点
100万円を超える海外送金を実行する際は、マネー・ローンダリングやテロ資金供与対策といった国際的な取り組みの一環として、金融機関では通常よりも厳格な手続きや確認が求められます。そのため、以下の点に注意が必要です。
海外送金手続きをする金融機関での送金上限額や受取人側の銀行の受け取り上限額をあらかじめ確認する
高額な海外送金をする際は、金融機関の送金限度額だけでなく、受取人の銀行側での受け取り上限額も事前に確認しておきましょう。
3,000万円以上の海外送金をする際は、日本銀行宛への報告書を提出する
先述したように、輸出入貨物代金以外の3,000万円相当額超の支払いは、日本銀行への報告義務があります。忘れずに提出しましょう。
必要書類を早めに準備しておく
どの金融機関でも、マネー・ローンダリングやテロ資金供与対策として本人確認や送金目的、送金の資金源など厳格な確認を行ってから送金の実行となります。円滑に手続きを進めるには、必要な書類は早めに準備しておきましょう。
100万円以上の海外送金を受け取る際の注意点
海外送金を受け取る際にも、いくつか注意すべきポイントがあります。
送金人に口座情報を間違いなく伝える
海外送金で銀行口座で資金を受け取る際には、以下の情報を英文表記で送金人に共有しましょう。
受取人取引銀行名
SWIFT(スイフト)コード・BIC(ビック)コード
受取人口座番号
受取人名
受取手数料・受取金額に注意
銀行口座で海外送金を受け取る際には、受取人も手数料を負担する必要があります。この手数料は送金資金から差し引かれ、銀行や受け取り通貨(円建て・外貨建て)などの条件によっても変わります。そのため、受取金額が想定よりも減ってしまう可能性があることに注意です。
このような手数料負担を避けるには、Wiseのマルチカレンシー口座の取得がおすすめです。Wiseでは、9通貨を受け取れるマルチカレンシー口座を開設できます。主要9通貨であれば、受け取り手数料は無料です。
Wiseでは、従来はアカウントでの保有限度額は100万円までの上限が設けられていましたが、日本のユーザー(個人・法人)に限り、上限2,000万円を最長6カ月間まで保有できるようになりました。詳細は「日本のお客様のWiseアカウントの保有限度額について」をご確認ください。
3,000万円以上の海外送金を受け取る際は、日本銀行宛への報告書を提出する
送金時と同様に、輸出入貨物代金以外の3,000万円相当額超の受け取りにおいても、日本銀行への報告義務があります。忘れずに提出しましょう。
まとめ
100万円以上の高額海外送金は、小分けにする必要はありません。第一種資金移動業として認可を受けている海外送金サービスを利用すれば、一括送金も可能です。
第一種資金移動業のなかには、銀行よりも送金手数料を大幅に節約したり、送金額が上がるほど割引を受けられるサービスもあります。ただし、海外送金サービスには為替レートに手数料が含んでいることもあり、為替手数料で損をすることは避けたいものです。
Wiseのような為替手数料無料のミッドマーケットレートが適用されるサービスなら、コスト削減が期待できます。わずかに見える為替手数料も、100万円以上、500万円以上など送金額が大きくなるにつれて大きな負担となるため、手数料体系をしっかり比較検討したうえで、サービスを選択していきましょう。
出典