海外赴任中は住民税を払う必要なし?海外移住時に知っておきたい税金のノウハウ!
海外赴任で家族と一緒に海外移住をしたり、留学で海外に長期滞在をしたりする場合、住民税を支払う必要があるのかと疑問に思う人はいるでしょう。実は、住民税は非居住者だからといって免除されるわけではありません。特に海外赴任の場合、課税免除がいつから適用されるのかを理解することが重要です。そこで今回の記事では、海外移住をしたあとの住民税の扱いについて詳しく説明していきます。また、海外での支払いや海外送金に便利なオンラインプロバイダー、Wise(ワイズ)もあわせてご紹介していきます。
海外赴任や海外移住をしたら住民税は払わなくて良い?
この段落では、住民税の基本的な知識を簡単にまとめていきます。
居住者と非居住者の定義
住民税とは公共施設や上下水道など、地域社会の費用負担をその地域の住民が分かち合うための税であり、課税の対象となるのはその地域の居住者です。国税庁のウェブサイトによれば、「居住者」は「その地域に住所を有する、もしくは現在まで続いてその地域に1年以上居所がある個人」を言います。それに該当しない個人は「非居住者」と定義されます。
非居住者になったら住民税は払わなくて良い?
しかし、海外に移住して日本の住所がなくなったからといって必ずしも自動的に課税の義務がなくなるわけではありません。なぜなら、住民税はその年の1月1日にその市区町村に住所がある人が課税対象になるからです。ちなみに、課税額は前年の所得に応じて決定されます。
例えば2024年9月1日に海外移住をした場合で考えてみましょう。翌年の2025年1月1日時点では日本に住所がありませんので、2025年に支払わなければならない住民税はありません。一方、2024年1月1日時点では日本に住所があるため、前年の2023年1月1日~2023年12月31日の所得額に応じて住民税が発生します。
住民税の支払い方法は給与所得者とそれ以外によって異なり、前者の場合は毎年6月~翌年5月にかけて給与から差し引かれる形で特別徴収されます。仕事による海外赴任で、日本の会社から引き続き日本円で給与を受け取っている場合にはそこから徴収されるので特に手続きはいらないはずです。一方、現地の銀行口座で受け取る場合には特別徴収ができず、別途納税が必要になるかもしれません。いずれの場合も、詳しくは会社に確認してみましょう。
転職して現地で就職する、そもそもフリーランスで働いている、など日本の給与所得者でない場合には納税通知書を利用して普通徴収をする必要があります。納税通知書は一般的に毎年6月頃届くので、出国前までに支払いを済ませておくことで納税完了となります。一方、スケジュールの都合で納税通知書を受け取る前に出国しなければならない場合もあるでしょう。その場合には納税管理人を選任して自治体に届け出ておくことで、その人に代わりに納税してもらうことが可能です。
住民税が発生するのは、移住後も日本に住民登録が残っているとき
前述の通り、住民税は「その年の1月1日に住所がある市区町村」で発生します。そのため、海外に転居していても住民登録が残ったままだと住民税の課税対象になりますので注意が必要です。海外に引っ越したからといって日本の住所が自動的に削除されるということはなく、住民登録を削除するには必ず自治体の窓口に「国外転出届」を出さなければなりません。
国外転出届の提出が求められるのは、原則として1年以上海外に引っ越す場合です。旅行や留学などでそれより短い期間の滞在の場合には提出の義務はありません。提出できるのは転出予定日の14日前から、窓口や郵送で手続きができます。ただし、自治体によって提出要件や方法が異なるので詳しくは国外転出届を提出する自治体に確認しましょう。
非居住者になった場合の所得税はどうなる?
上述の通り、その年の1月1日時点で国外転出届を提出し非居住者となっている場合には住民税は発生しません。一方で、所得税については居住者、非居住者に関わらず日本国内で発生した所得に関しては納税しなければなりません。例えば日本にある不動産から得た収入などがそれにあたります。海外で得た所得については日本での納税義務はなく、その国の税制にのっとって税金を納めます。
海外在住でも日本で収入がある場合の所得税は?
日本の所得税法では、非居住者に対する課税の範囲を「国内源泉所得に限る」と定めています。具体的には、下記のような収入が課税対象になります。
日本国内にある資産の運用や保有により生じた収入
日本国内にある資産を譲渡したことによる収入
日本国内で勤労したことにより得た給与収入
日本国内にある不動産からの賃貸収入
ここで疑問になるのが、オンラインで得た収入はどうなるのかという点です。フリーランスのライターやウェブデザイナーなど、フルリモートで働いて収入を得ている人も中にはいるでしょう。自分自身は海外にいて非居住者でも、日本の会社から仕事を得て日本の銀行口座に報酬を振り込んでもらっている場合にはどうなるのかと疑問に思う人もいるはず。
結論からいうと、上記のような場合であればほとんどのケースで所得税の課税義務は発生しません。ただし、日本の税法では「国内源泉所得」を細かく定義しており仕事の内容や働き方によっては国内源泉所得とみなされることもあります。そのため、「海外で働くフリーランス=所得税非課税」と断言することはできません。ご自身のケースが所得税の対象になるかどうかは、税務署や税理士に相談して確認することをおすすめします。
海外からの確定申告はどうする?
仮に、所得税が発生した場合には確定申告が必要になります。e-tax(国税電子申告)を使えばオンラインでの確定申告ができますが、これまではマイナンバーを持つ国内居住者のみを対象にしたシステムで、非居住者は利用することができませんでした。そのため確定申告の際には帰国して日本国内で手続きをするか、納税管理人に頼んで確定申告をしてもらう必要がありました。
しかし、2024年5月27日より日本国籍を有する場合には国外に転出してもマイナンバーを継続して利用できるようになりました。海外へ引っ越す前に国外転出者向けのカードに切り替える手続きをしておけば、自身の番号をそのまま維持できます。2025年以降の確定申告に関しては、この番号を使ってe-tax上で海外にいながらでもご自身で確定申告も可能になると考えられます。
1年未満の海外滞在の場合は?183日ルールとは?
海外滞在が1年未満の場合には国外転出届を出す必要がなく、日本の居住者として扱われます。そのため、住民税も所得税も日本で納めなければなりません。しかし、日本以外の国では6ヶ月以上の滞在者を居住者扱いする国もあり、6ヶ月~1年未満の海外滞在の場合だと日本と現地の国の両方で居住者扱いとなってしまうことがあります。そうなると両国で所得税や住民税が発生する二重課税が発生する可能性があります。
この二重課税を防ぐために定められているのが「短期滞在者免税(183日ルール)」です。短期滞在者免税とは海外滞在期間が年間183日以内の滞在者を対象とした免税措置で、この期間の報酬もしくは給与に関しては所得税が免税となる制度です。ただし、これは日本と租税条約を結んだ国に滞在する場合のみを対象としており、適用を受けるには「租税条約に関する届出書」を提出しなければなりません。
海外移住時の税金に関する注意点
ここからは、実際に海外転出する際にはどんなことに注意が必要なのかを見ていきます。状況によっては出国前に手続きが必要になることもあるので、抜け漏れがないよう確認おきましょう。
移住したタイミングによって住民税が課せられることがある
先に説明した通り、住民税は1月1日時点で住民登録がある場合にはその年の住民税が発生します。年度の途中で国外転出した場合も税額は変わらず、全額納める必要があります。例えば1月2日に出国しても、12月31日に出国しても、その年の住民税額は変わらないのです。
課税された分は基本的には国外転出をする前に完納しなければなりません。もしそれが難しい場合には、納税管理人を選任し代わりに納付してもらいましょう。
国外転出時課税制度により、海外移住時に所得税を納めなければならないことがある
国外転出時課税制度とは、国外転出をする居住者が以下の2つの条件を満たす場合に所得税を納めなければならないという制度です。
国外転出の際に保有している対象資産の時価総額が1億円を超える
国外転出日より10年以内に、5年以上日本に在住している
この両方に該当する場合には所得税の支払い義務があるため、出国までに完納するかそれができない場合には納税管理人の選任が必要になります。
日本と海外で二重に課税されることがある
海外に住んでいても、日本国内に発生源泉のある所得については日本の所得税が課税されます。例えば日本国内に不動産を所有し、賃貸収入を得ている場合などです。一方、滞在先の国で確定申告をする際には日本での所得も申告しなければならないことがあり、そうなると日本と滞在国の両方で課税されてしまうことがあります。
この二重課税を防ぐために定められているのが租税条約です。租税条約とは、二重課税の排除や脱税の防止などを目的とし、それにより二国間の健全な投資及び経済交流の促進を目指し締結されているものです。日本は155の国と地域と租税条約を結んでいます。(2024年11月現在)
日本が租税条約を結んでいる国や地域に滞在する場合には、この制度のおかげで二重課税を避けることができます。ただし、適用を受けるには「租税条約に関する届出書」を提出しなければなりません。この届出書は様式が複数あり、申請の内容によって適切な様式が異なります。詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。
非居住者となった場合、利用できる所得控除が限られている
通常、確定申告を行う場合には各種の控除が適用されます。医療費控除や社会保険料控除、生命保険控除などさまざまな控除がありますが、非居住者の場合は使える控除が「雑損控除」「寄付金控除」「基礎控除」の3つに限られています。雑損控除については国内の資産について生じた損失のみが対象です。そのため、海外在住者が確定申告を行う際には通常よりも課税対象額が大きくなり、徴収額もそれに応じて大きくなることがあります。
海外赴任・移住時のお金の管理に便利なサービス
仕事や留学などで海外移住する際には、お金をどうやって持っていくか悩む人も多いでしょう。長期滞在の場合は必要な資金は大きくなるので、現金で持っていくことに不安を覚える人もいるはず。また、海外赴任中の家族に海外送金をしなければならないこともあるかもしれません。ここでは、そんなときに役立つオンラインプロバイダー、Wise(ワイズ)をご紹介します。
Wise
Wiseは複数の通貨の保有や管理、海外送金ができるオンラインプロバイダーです。対応通貨には日本円も含まれます。自分の口座を開いたあとに、日本円で自分のアカウントに入金、マルチカレンシー口座を開けばそのお金を送金に使えます。自分のアカウントに付属しているデビットカードを使えば現地での支払いや現金引き出しも可能です。
海外送金の際には、送金手数料のみで海外送金ができます。ほとんどの金融機関は独自に為替レートが設定されており、その中には為替手数料が上乗せされているのが一般的です。しかし、Wiseの場合には為替レートにミッドマーケットレート(実際の為替レート)を採用しており、為替手数料を徴収していません。そのため、海外送金にかかる手数料が非常に安くなっています。
送金手数料は通貨によって異なり、0.6%〜で送金可能です。海外送金にかかる日数や手数料はWiseの公式ホームページで簡単にシミュレーションができます。ちなみに、海外移住したあとは登録住所を現地のものに変更する必要があります。
まとめ
今回の記事では、海外移住後の住民税や所得税の扱いについて詳しく解説してきました。住民税はその年の1月1日に住居がある場合に課税されるので、移住のタイミングによって課税対象かどうかが変わります。所得税に関しては、日本国内に発生源泉がある所得については居住地に関わらず課税対象です。ただし、税金に関わるルールは非常に細かく決められており、状況や条件によって適用内容が変わることがあります。そのため、心配な場合には税理士や税務署などに確認をすることをおすすめします。
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