電信送金(Wire Transfer)とは?手数料、所要時間、やり方を分かりやすく解説
英語では「Wire Transfer」と呼ばれる電信送金。この記事では電信送金の手数料、所要時間、やり方を分かりやすく解説します。Wiseなど電信送金以外のおすすめの海外送金方法もご紹介します。
電信送金(Wire Transfer)とは?
電信送金は、送金元と受取先の銀行が直接やり取りする送金方法です。送金元の銀行は受取人の銀行あてに電信により送金受取人への支払指図をすることで送金が実行されます。英語では「Wire Transfer」と呼ばれています。
文字だけ見ると電子的な送金であれば全て電信送金なのではないかと思うかもしれませんが、日本では基本的にSWIFTを利用した海外送金について「電信送金」と呼びます。
日本国内の一般的な送金では、全国銀行データ通信システムという中央集権型の送金ネットワークを利用しています。一般的には全銀システムや全銀ネットと呼ばれています。この全銀システムを利用した送金では1億円未満の送金については1件ずつ資金が実際に移動しているわけではありません。1日1回まとめて各銀行が日本銀行に預けている預金口座の残高を増減させることによって決済を完了させます。
これは日本に限った話ではありません。アメリカにはACH(Automated Clearing House)という仕組みがあります。日本語にあえて訳すとしたら「自動資金決済センター」となるでしょうか。ACHは全米自動決済協会 (NACHA)によって運営されており、全銀システムと同様に大量の取引が1日数回まとめて決済されています。かつては ACH 送金は遅くて安いというイメージでしたが、今では当日中の送金も可能になっています。
一方で電信送金では一般的には1件ずつ決済します。これは日本でもアメリカでも同じです。ただし、アメリカでは電信送金は国内送金にも使われますが、日本国内の日本円での送金は基本的には全銀システムが利用されるので、日本で電信送金が使われるのは基本国際送金か外貨送金のみです。そのため先述の通り、日本で電信送金というとSWIFTを利用した国際送金を指すことになります。
SWIFTとは国際銀行間金融通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)の略です。SWIFTに加盟する金融機関はSWIFTが定めた電文フォーマットで送金指示を送信します。SWIFTでは送金元銀行と受取人銀行が直接やりとりしますが、お互いに取引関係がない場合は、コルレス銀行と呼ばれる中継銀行を介して国際送金を行います。SWIFTに加盟する金融機関にはSWIFTコードあるいはBICコード (Bank Identifier Code) と呼ばれる8桁(もしくは11桁)の金融機関を識別するコードが割り当てられています。
電信送金とそれ以外の送金方法の比較
銀行のSWIFTによる電信送金とそれ以外の送金方法の比較をしてみましょう。日本からアメリカに50万円送金する場合の手数料などは以下の通りです(2024年4月23日現在)。
銀行・サービス | 送金手数料 | 為替手数料 | 中継銀行手数料(送金人負担の場合) | 合計手数料 | ホームページ記載の送金日数 |
---|---|---|---|---|---|
Wise | 3258円 | 無料 | 無料 | 3258円 | 送金時に確認可能 |
Revolut | 無料(※1) | 無料(※2) | 非公表 | 中継銀行手数料分 | 3〜5営業日 |
750円 | 25銭/ドル(※3) | 1,000円 | 1,750円+為替手数料 | 1〜3営業日 | |
(※4) | 3,000円 | 1円/ドル | 三菱UFJダイレクトは受取人負担のみ | 3,000円+為替手数料(受取人負担の中継銀行手数料除く) | 数日またはそれ以上の日数 |
上記で電信送金の比較対象としたWiseは、「新しいテクノロジーで国際送金のあり方を変える」ことをミッションに掲げたイギリス発の金融企業です。Wiseでは、事前のシミュレーションで事前にすべての手数料を確認できるので安心です。為替手数料や中継銀行手数料などもかからないので、送金手数料だけを確認すればよく、送金コストが非常に見えやすくなっているのが特徴です。
同様にRevolutもアプリで利用可能な新しい金融サービスです。Revolutの海外送金では会費無料のスタンダード会員でも為替市場営業時間内かつ月75万円までであれば為替手数料が無料になります。さらに海外送金手数料も無料で利用できます。ただし、送金先銀行や中継銀行によって手数料が発生し、送金額から差し引かれる場合もあるので気をつけましょう。
(※1)送金先銀行や中継銀行による手数料が発生する場合がある。 (※2)送サービスが指定する為替市場営業時間内かつ月75万円までの両替の場合。それ以外の場合は1〜2%の手数料がかかる。 (※3)銀行営業日の17:00前後から翌営業日の10:00前後までは、通常の為替手数料を乗せたレートにさらに1.0075を乗じた夜間レート、銀行休業日の前営業日の17:00前後から翌銀行営業日の10:00前後までは、1.015を乗じた休日レートを適用する。 (※4)三菱UFJダイレクトを利用した場合。店頭では一部手数料が異なる。電信送金にかかる費用
海外送金での電信送金の手数料は国内送金よりも大幅に高いのが一般的です。例えば、三菱UFJ銀行から三菱UFJダイレクトを利用した電信送金(海外送金)には3,000円もかかってしまいます。国内送金の手数料が数百円程度であることを考えるとかなり高いように感じますね。
電信送金のコストが高い理由には様々なものがありますが、1件ずつ処理をしないといけないというのもその理由の一つでしょう。国際送金だからという理由ももちろんありますが、アメリカにおいてACH 送金は通常無料なのに対し国内の電信送金の手数料がそれより遥かに高いという事実を考えると、やはり1件ずつの手間のかかる処理もコストを引き上げていると考えるのが妥当そうです。
為替レートに上乗せされた手数料も
海外送金で適用される為替レートは、ミッドマーケットレートに為替手数料が上乗せされた、各銀行独自のレートとなっています。このような金融機関が顧客へ外貨を販売する時のための手数料込みのレートを一般にTTS(対顧客電信売相場)と呼びます。一方で手数料が含まれていない「実際のレート」をTTM(電信仲値相場)と呼びます。
日本の大手銀行では、米ドルの場合TTMに1ドルあたり1円加えた金額をTTSとしているのが割と一般的です。例えば、TTMが1ドル=150円の日にはTTSは1ドル=151円となっています。この1円の差が為替手数料なのです。
TTMが1ドル=150円の日にアメリカの受取人に1,000ドル送りたい場合を考えてみましょう。TTMのレートのまま送金できれば150,000円の準備で済みます。しかし、みずほ銀行での海外送金時には為替手数料が上乗せされたTTSレートが適用されるので、実際には151,000円必要になります。この差額1,000円が「隠れた為替手数料」なのです。
一見少額なコストに見えますが、送金金額が大きいほど為替コストも目立ってくるので要注意です。特に米ドル以外で送金する場合は、このTTMとTTSの差がより開いていくので、為替コストによる手数料増加も無視できません。
実際のレート(ミッドマーケットレート)と各銀行の為替レートを自分で比較しないと、実際にどれだけの為替手数料が上乗せされているのかはっきりとは分かりません。そのため、気が付かぬところで思わぬコストがかかってしまう場合もあります。各銀行で海外送金する前には、必ず実際のレートと各銀行の為替レートを比較するようにしてみましょう。
海外送金を取り扱う銀行の中には「リフティングチャージ」という手数料を設けているところもあります。これは海外送金の際に、通貨の両替を伴わない場合に発生する手数料です。入金した通貨と同じ通貨で送金されてしまうと、銀行は先述した両替で発生する「隠れた為替手数料」で稼ぐことができないので、その分を他の手数料として徴収しようとするものです。例えば、日本円で送金し、海外の相手先が日本円のままで受け取る場合、リフティングチャージが発生することがあります。
中継銀行や送金相手先の銀行から手数料が請求され、その手数料分が減額されて相手の口座に送金が届くこともあります。このような手数料について送金元銀行によっては「依頼人負担」(送金者負担)にすることが可能です。
例えば、三井住友銀行から海外送金する場合この「依頼人負担」が可能です。しかし、その場合は関係銀行手数料として2,500円を送金者が支払う必要があります。しかも、関係銀行手数料を支払って「依頼人負担」を選択したとしても、コルレス先支払銀行より 4,000 円を超える手数料を請求された場合は、請求金額と関係銀行手数料として支払った2,500 円との差額分は改めて支払う必要があります。
電信送金にかかる時間
電信送金で海外送金した場合、実際に受取人の手元に着金するまでの時間は実際に送金してみるまで分からないというのが一般的です。というのは海外送金は1 件ごとの個別の資金決済を行っており、国や地域だけではなくタイミングでも送金に必要な日数は変わるからです。
実際に送金に何日かかるは、日本の祝日だけでなく、受取銀行や中継銀行がある国・地域の祝日などにも影響されます。日本の地方銀行から外国の地方銀行の送金のような中継銀行を多く介する必要のある電信送金の場合、かなり日数がかかることもあります。銀行からの送金は余裕をもって行いましょう。
例えば三井住友銀行のホームページには「各種規制の強化や国際情勢等を受けて、送金内容の確認を十分に行うため、店頭での仕向外国送金については翌営業日以降の取組となる可能性がございます」とも書かれています。このような場合、店頭受付日の為替レートではなく、送金取組日の為替レートが適用されるので、実際にいくら必要なのかは送金申込日にはわからないという問題も発生するので気をつけましょう。
電信送金のメリットとデメリット
銀行にもよりますが、日本から海外に電信送金を利用した国際送金をするメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
多くの国・地域・銀行に送金可能
比較的高額な送金ができる
友人窓口で送金する場合、不明点について相談しながら送金手続きができる
デメリット
送金手数料が高く、送金手数料以外にも発生する手数料がある
多くの銀行においてオンラインで対応している送金先や送金可能通貨に制限がある
為替手数料が不透明である
送金先口座に着金するまでの時間が送金時には分からない
電信送金の代わりになるサービスは?
日本から海外に国際送金する方法は銀行による電信送金だけではありません。以下に代替手段の一例を示すので参考にしてみてください。
Wise
Wise(旧Transferwise)は英国にグループ本社を置く金融サービス企業です。Wiseでは、一般的な銀行が海外送金で使っているSWIFTとは全く違う仕組みを利用しています。結果としてWiseは一般的な銀行よりもはるかに安く、そして分かりやすい海外送金サービスを提供しています。
Wiseでは世界中の70の国と地域に送金可能です。また、両替は常に実際の為替レート(ミッドマーケットレート)を使用しており、銀行のように「隠れた手数料」は上乗せされておらず手数料が送金時にはっきりわかります。。
Wiseでは国を跨いで実際に資金が移動しているわけではありません。送金人が自国にあるWiseの口座にお金を振り込むと、その金額をWiseが受取人の国の口座へと振り込むという仕組みになっています。国を跨いでお金が移動していないとなると国内送金とやっていることはあまり変わらないので、手数料やかかる時間を大幅に抑えることができます。
銀行では送金完了まで送金にかかる日数と手数料が分からないのに対し、Wiseでは送金時にそれらを明示しています。Wiseでは銀行での海外送金にかかる中継銀行手数料やリフティングチャージが発生しません。
Revolut
Revolutは英国発の海外送金・外貨両替などがスマートフォンで完結するサービスです。Revolutは銀行ではありませんが、Wiseと同様に各国で金融サービス提供に必要なライセンスを取得しています。Revolutでは他のRevolutユーザーへの送金の他、銀行口座への送金も可能です。Revolut側の送金手数料は無料ですが、送金する際に中継する銀行や受取銀行による手数料が発生する場合があります。また、他の銀行を経由するため、着金までに時間がかかってしまうこともあります。これはRevolutから銀行口座への送金の際には銀行による海外送金と同様にSWIFTを利用しているからです。
Revolutにはいくつかのプランが用意されていますが、無料プランでも有料プランでも海外の銀行口座への送金手数料は無料です。両替手数料は無料の「スタンダード」プランの場合でも為替市場営業時間内かつ月750,000円までなら無料です。有料プランである「プレミアム」や「メタル」の場合為替市場営業時間内なら限度額なしで無料となります。
電信送金はどうやってする?
日本から海外への電信送金を希望する場合、各銀行の窓口やウェブサイトから可能です。ただし日本の銀行の場合、大手銀行でも事前の申し込みなしにいきなり海外送金できるということはありません。例えば、三菱UFJダイレクトで海外送金するには、事前に外国送金の利用申込が必要です。また、みずほ銀行のみずほダイレクトアプリにおいても店舗での海外送金の経験がなければ原則アプリでの送金もできません。
海外送金を申し込む際には、受取人の情報が必要になります。送金手続きをする前に、以下の項目を受取人に訪ねておきましょう。
送金先の国・地域名
受取人の口座名義
受取人の口座番号
受取人の銀行名と銀行の住所
受取人の銀行のSWIFTコードもしくはIBAN※
受取人の住所、電話番号、メールアドレス
これらに加えて、送金時には銀行に送金目的を申告する必要があります。
※SWIFT BICとも呼ばれるSWIFTコードは世界共通の銀行の識別番号のことで個別の銀行(もしくは支店)ごとに付与されています。ヨーロッパや一部の中東の国々への送金する場合、受取口座の所在国・銀行・支店・口座番号を特定する国際標準コードであるIBANが必要です。
最近では海外送金できる店舗窓口を減らしている銀行も増えています。三井住友銀行の場合、かつて仕向外国送金受付店舗だったが、今は取扱を終了してしまったという店舗も一覧で公表していますが、高田馬場支店や下北沢支店などでも海外送金ができなくなってしまったようです。
現在では東京都内でも取扱店舗はそんなに多くなく、豊島区や目黒区でさえも取扱店舗は現状1店舗ずつしかありません。大阪市内でも海外送金可能な店舗はたったの6店舗、名古屋市内ではなんと1店舗だけとなっています。普段よく行く三井住友銀行の支店では海外送金できないということも多くありそうなので気をつけましょう。
電信送金の限度額
一般的に日本の銀行の窓口で海外送金を申し込む場合、特に送金限度額はありません。ただし、送金額が 3000万円相当額を超える場合、取引内容により「支払または支払の受領に関する報告書」の提出が必要となる場合があります。これは外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づくものです。オンラインでの送金申し込みには限度額が設けられているのが一般的です。
まとめ
ここまで、銀行を使った電信送金について、気になる手数料や送金手順、送金日数などを見てきました。銀行による電信送金にかかる手数料は決して安くありませんが、普段使っている銀行から海外送金ができるのは安心感がありますね。
しかし、為替レートにどれだけの為替手数料が上乗せされているのかが分かりにくいのは困ったところです。銀行からの国際送金手数料が気になる人は、RevolutやWiseなどの海外送金サービスを検討してみるのも良いでしょう。どちらも銀行に代わる新しい送金方法なので、手数料を大きく節約できるかもしれません。
出典
電信送金 (Wise Transfer)に関するよくある質問
電信送金(Wire Transfer)は、送金元と受取先の銀行が直接やり取りする送金方法です。送金元の銀行は受取人の銀行あてに電信により送金受取人への支払指図をすることで送金が実行されます。
電信送金で海外送金した場合、実際に受取人の手元に着金するまでの時間は実際に送金してみるまで分からないというのが一般的です。というのは海外送金は1 件ごとの個別の資金決済を行っており、国や地域だけではなくタイミングでも送金に必要な日数は変わるからです。
各銀行の窓口やウェブサイトから可能です。海外送金を申し込む際には、受取人の情報が必要になります。送金先銀行のSWIFTコードあるいはBICコードが必要になることもあります。
海外への電信送金の手数料は国内送金よりも大幅に高いのが一般的です。送金を1件ずつ処理をしないといけないというのがコストが高い理由の一つです。