香港で日本人が起業するには?会社設立のプロセスを解説
アジアの主要な金融・ビジネス拠点として知られる香港。2024年の実質GDP成長率は2.5%と発表されており、2025年には2.0~3.0%の成長が見込まれています。新型コロナウイルス感染症により経済に打撃を受けたものの、香港政府を中心にビジネス環境の改善や新たな産業の育成に取り組んでおり、起業家にとっては多くの機会が存在するといえるでしょう。今回の記事では、そんな香港で外国人が起業する方法について詳しく解説していきます。
また、これから海外進出を目指している法人企業に便利なWiseの法人口座についてもあわせてご紹介していきます。Wiseの法人アカウントではお得に海外送金ができたり、現地の銀行口座を開けたりとビジネスに便利な機能がさまざまあり、おすすめです。
それでは早速、香港で外国人が会社設立する際のステップを見ていきましょう。
非居住者でも香港で起業できる?
非居住者が起業できる業種に制限はある?
ビザは必要?
起業をサポートしてくれるサービスはある?
海外での利用に便利なWiseの法人口座がおすすめ
外国人でも香港で起業できる?
外国人でも香港で起業することは可能です。香港は世界でも有数の「ビジネスに開かれた場所」として知られており、外国人に対してもほぼ香港人と同等の条件で会社設立の機会が与えられています。ITテクノロジーや貿易・輸出入業、ECなどは特に外国人に対しての制限もなく、比較的参入しやすい業種です。一方、金融業や飲食業、医療関連業などはライセンスが必要であり、設立までにより複雑なプロセスを要します。
また、会社登記には香港の現地住所が必要です。オンラインですべて業務がこなせるような会社であっても現地住所が必要なので、レンタルオフィスや登記代行会社を利用して住所を確保しなければなりません。加えて、香港会社法により会社設立には香港在住者または香港法人を企業秘書に任命することが義務となっています。
香港の市民権やビザは必要?
香港に居住権や土地権を持たない外国人がビジネスを設立あるいは参加するためにはビザが必要です。このことは香港入境事務處(Immigration Office)の公式ウェブサイトに明記されています。起業を目的としたビザとしては「起業家としての投資ビザ(Entry for Investment as Entrepreneurs)」が一般的です。これは香港で新たにビジネスを設立、または既存のビジネスに参加することを希望する外国人起業家向けのビザです。
このビザを取得するには、自身のビジネスが香港の経済成長に貢献できることを証明する必要があります。そのため、ビザの申請時に明確なビジネスプランの提示が必要です。他にも過去に別の場所で関連会社の経営をしていた場合にはその損益計算書の提出が必要だったり、会社を運営していくにあたり財源を明確にしなければならなかったり、いろいろと求められる条件があります。
スタートアップ企業の設立を申請することも手続き上は可能です。ただし、当該ビジネスが厳格な審査・選考プロセスを経た政府支援プログラムによる支援を受けていないと申請が通るのはなかなか通過は難しいです。
起業したら香港でビザは取得できる?
上述の通り、香港で会社を設立するには適切なビザを取得しなければなりません。そのため、「起業したらビザが取得できる」のではなく、「起業するためにビザが必要」と考える必要があります。ただし、実務にはまったく関わらずあくまで株主として関わるだけ、かつ移住するつもりがないのであればビザの取得は必須ではありません。
香港で開ける事業形態の種類
外国人が香港で起業するときに開ける事業形態にはいくつか選択肢があります。下記でそれぞれ詳しく解説していきます。なお、ここでご紹介しているのは非居住者でも設立できる会社の形態のみです。
株式会社(Private Limited Company)
最も一般的な会社の形態は株式会社(Private Limited Company)です。法人格があり、社会的に信頼が得やすい事業形態です。
メリット:
株式を発行して資金集めができる
永続的に存続できる
デメリット:
設立、維持にコストがかかる
年次報告などの事務作業がある
合名会社(Partnership)
合名会社とは複数の個人もしくは法人が一緒になってビジネスを行う形態です。パートナーの全員が無限責任を負います。
メリット:
複数人のスキルや知識を活用できる
設立が比較的容易にできる
デメリット:
各パートナーが共同責任を負う
本当に信頼できるパートナーを見つける必要がある
支店(Branch Office)
支店とは日本にある本社の延長としての会社のことをいいます。あくまで本社帰属であり、法的責任は本社が負います。
メリット:
現地法人を新設するより設立が比較的簡単にできる
本社のブランド・信用を活用できる
デメリット:
本社が無限責任を負う
独自の意思決定がしにくい
駐在員事務所(Representative Office)
製品・サービスの販売促進、あるいは品質管理を目的に設立されるのが駐在員事務所です。営利活動は行わず、あくまで情報収集をするためのオフィスです。
メリット:
設立手続きが非常に簡単
初期費用を抑えられる
デメリット:
収益活動(販売・契約締結など)ができない
法的権限が制限される
フリーランス/個人事業主
正確には事業形態ではありませんが、フリーランスもしくは個人事業主として働くこともできます。法人格はなく、経営者ひとりがすべての責任を負います。
メリット:
自由な働き方ができる
設立にかかる時間やコストが少ない
デメリット:
事業継続性が低い
信用力が低く、融資や取引先拡大に不利になることがある
香港で起業するときのステップ
この段落では、香港で株式会社を設立をするときのステップを解説していきます。それぞれのステップにかかるおおよその時間も示しておきますので、起業する際の目安にしてみてください。なお、事業形態によってステップに違いがあります。ここでは、外国人起業家に最も選ばれることの多い株式会社を例にとってステップを説明していきます。
1. 会社名の決定及び確認
まずは会社名を決めます。会社名は英語名もしくは中国語名、または両方で登録可能です。すでに存在する会社名を使うことはできないので、登録の前に重複がないか確認する必要があります。香港会社登記所の検索ツールを使って検索してみましょう。
推定所要時間:1~2週間
2. 登記書類の準備
会社登記に向けて、必要書類を準備していきます。主に必要な書類は下記の3つです。
Form NNC1(設立申請書)
Articles of Association(定款)
A Notice to Business Registration Office(会社登記所への通知)
なお、これらの書類には会社の住所を記入する箇所があります。そのため、申請時には会社の登録住所として香港の住所を持っておかなければなりません。ただし、登録住所は実際の業務スペースである必要はないため、バーチャルオフィスの住所を活用して登録することも可能です。
また、申請時には会社秘書を任命している必要があります。上述の通り、香港の会社設立には香港在住の個人もしくは法人を会社秘書に任命しなければなりません。あらかじめ協力者を探しておくか、会社秘書を提供している信頼できる法人サービスを利用して秘書役を任命しておきましょう。詳しくは後述をご覧ください。
推定所要時間:1~3週間
3. 会社登記申請
必要書類を揃えたら、いよいよ会社登記の申請を行います。申請はオンラインでも書面でも可能です。提出書類に不備がなければすぐに審査~承認が行われますが、場合によっては追加で書類の提出や情報の提供が求められることがあります。スムーズにいけばオンライン申請の場合は早くて1時間、書面申請の場合は4営業日でBusiness Registration Certificate(事業者登録証明書)が発行されます。
推定所要時間:1~4日
4. 銀行口座の開設
無事会社が設立できたら、法人銀行口座の開設が可能になります。登記証明書など必要書類を準備して、開設の手続きをしましょう。なお、香港ではKYC(Know Your Customer:顧客確認)のプロセスが必須となっており、会社代表者が現地へ行って面談を行うことが通常の流れとなっています。外国人のみの会社の場合審査が厳しいといわれており、承認までに1カ月以上かかることもあります。
推定所要時間:1~4週間
ちなみに、海外送金のやりとりにはWiseの法人アカウントの開設がおすすめです。Wiseとはオンラインで複数外貨の両替や送金ができるプロバイダーで、対応している国であれば現地の法人口座を開くこともできます。香港ドルにも対応しており、資金の受け取りや給料の支払いなど便利に使えます。日本の口座で管理している資金を送金したり、香港ドルと日本円を両替するときに便利です。
Wiseの海外送金は手数料が0.6%~と非常に安く抑えられており 、銀行などの他の金融機関で海外送金するよりお得に取引ができる可能性があります。ちなみに海外送金ができる国は140 カ国、保有できる通貨は40以上にもなります。海外でビジネス展開を考えているなら、ぜひ開設を検討してみてください。また、個人アカウントを開設すれば自身が香港に移住する際に便利です。手数料を抑えて両替したり、自分の資金を海外送金したりといった使い方ができます。Wiseのデビットカードがあれば海外での支払いにも使えます。ただし、登録住所を香港の住所に移してしまうとデビットカードの利用ができなくなってしまうので注意が必要です。
非居住者向けのサポートはある?
海外で起業するときには、法律や制度の違いをはじめ、商慣習や文化など知っておかなければならないことがいろいろとあります。必要に応じて、現地の情報に詳しい専門家や組織のサポートを受け、スムーズな会社設立を目指しましょう。香港で起業するなら、下記の組織や法人が助けになってくれます。
JETRO(日本貿易振興機構)
JETRO(ジェトロ)は日本と各国の相互貿易・投資の促進を目指す政府関連機関です。1958年に設立され、日本企業が各国に進出する際には起業支援やビジネス情報の提供を行っています。香港にも事務所が置かれており、JETRO香港事務所を通じて現地情報の収集が可能です。
香港日本人商工会議所
香港日本人商工会議所は1969年に前身の香港日本人倶楽部経済部の急激な拡大を受けて設立されました。香港と日本の間での経済的な連携を促進、会員相互間の交流を図ることなどを目的に活動しており、さまざまな情報提供を行っています。
会社秘書役サービス
「香港で起業するステップ」の段落で少し触れましたが、会社秘書役を斡旋してくれるサービスもあります。例えば「Sleek」というサイトでは秘書役の斡旋を行っているほか、登記申請のサポートも行っています。同じように「Bridge Executive Centre」というサイトでは秘書役・登録住所・税務・ビザなど幅広く対応しています。それぞれ料金体系や利用できるサービスが異なるので、必要に応じて利用を検討してみてください。
香港での会社設立にかかる費用
香港で会社設立する際にかかる費用は大きく分けて「会社設立登記料」と「商業登記費」のふたつです。それぞれ値段は下記の通りです。
会社設立登記料:オンライン申請の場合は1,545HKD(約28,300円)、書面申請の場合は1,720HKD(約31,500円)
商業登記費:1年間で2,200HKD(約40,300円)
※2025年4月20日のレート(1HKD=18.31円)を参照
もし設立にあたり各種代行サービスを利用する場合には、そのエージェントに支払う費用も発生します。
ちなみに、香港では株式会社設立の際に最低資本金の要件が特に定められていません。つまり、1HKDから会社設立が可能なのです。
起業までにかかる時間は?
一般に、登記申請をしてから承認が下りるまでは1~4日程度かかります。つまり、申請の準備さえ整えてしまえばそのあとは比較的すぐに会社設立へ進めるということです。申請準備を整えるまでには会社名の決定や秘書役の任命、登録住所の決定などのプロセスがあります。すべてスムーズにいって3週間程度、おおめに見積もるなら5週間程度が目安になるのではないでしょうか。
留学生は香港で起業できる?
香港の留学生ビザでは就労は可能ですが制限があります。具体的には週20時間以内のキャンパス内でのアルバイト、カリキュラム関連のインターンシップ、あるいは夏季のアルバイトであれば就労可能です。しかし、起業やビジネス運営については許可されておらず留学生ビザのままこれらの活動をすることはできません。適切なビザに切り替えてから動き出す必要があります。
まとめ
今回の記事では、香港で起業する際の手順やポイントについて詳しく解説してきました。香港は外国人に開かれた市場としてよく知られており、外国人でも現地の人とほぼ同じ条件で会社設立が可能です。新たなビジネスチャンスを開拓するなら、ぴったりの国かもしれませんね。
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