アメリカで日本人が起業するには?手順やビザについて解説

高橋 美穂
ライター
石井 美南海
最終更新日
2025年2月10日

世界最大の経済大国であり、スタートアップ先進国と呼ばれるアメリカ。

「日本よりも起業家の多いアメリカで起業したい」「アメリカで起業するにはどんな手順が必要?」という方に向けて、今回は日本人がアメリカで起業する方法やビザについて詳しく解説します。

また、本記事では世界へビジネス展開する法人の方に最適なWise(ワイズ)の法人口座についてもご紹介します。Wiseでは米ドルの口座情報を取得できたり、アメリカ国外への外貨での支払いにも便利に利用できます。

アメリカで日本人が起業するための重要ポイントを見ていきましょう。



  • アメリカの非居住者でも起業は可能?
  • 非居住者が起業できる業種に制限はある?
  • ビザはどうなる?
  • 起業サポートサービスはある?
  • アメリカ非居住者でも開設できるWise(ワイズ)の法人口座が便利
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外国人はアメリカで起業できる?

まず結論としては、外国人であってもアメリカで起業することができます。ここでの「外国人」とは、アメリカのパスポートを保有していない人のことを指します。

ただし、会社の形態によっては業種や取得できるビザが限定される点に注意が必要です。

アメリカの市民権やビザは必要?

アメリカで起業するには、ビザを取得する必要があります。日本国籍者の場合、短期商用・観光等の目的では90日間まで滞在することができますが、起業家として90日以上滞在する場合は、E-2ビザと呼ばれるいわゆる「投資家ビザ」の取得が適しています。

E-2ビザは、アメリカと条約を締結する国の国籍を持つ外国人が申請することができ、初回は最長2年間の滞在許可が与えられます。*(1)

*(1) 2025年1月26日現在

アメリカで起業すると、ビザを取得できる?

アメリカでは、優秀な人材の誘致に向けていわゆる「スタートアップビザ」を導入しています。

アメリカの国土安全保障省は、外国人起業家向け移民プログラム「国際起業家ルール(International entrepreneur rule)」を導入しています。国際起業家ルールとは、ビジネスの成長や経済貢献が期待できるなど一定の条件を満たす外国人起業家に対して、一時的な入国を認める制度です。国際起業家ルールの条件を満たすと、初回は最長2年6カ月間の滞在が許可されます。*(1)

国際起業家ルールは2017年、オバマ政権時に導入されましたが、その後第一次トランプ政権により撤回。2021年にバイデン政権により再開されていますが、トランプ氏の大統領再選により今後も継続されるかは不透明です。

国際起業家ルールに関しての詳細は、常に最新の情報を確認するようにしてください。

*(1) 2025年1月26日現在

アメリカでの事業形態の種類

次に、外国人としてアメリカで起業できる会社形態の種類をご紹介します。ここでは非居住者としてアメリカで設立できる会社の種類のみを記載しています。

株式会社 (C-Corporation)

C-Corporationは日本の株式会社に相当する会社形態です。日本本社の100%子会社としてアメリカに法人を設立する場合は、C-Corporationの形態を利用するのが一般的です。定款を作成し、内国歳入庁(IRS)の納税者登録や雇用主証明番号(EIN)の取得が必要になります。

メリット:

  • 株式を発行して資金を集めることができる

  • 大規模な事業に適している

デメリット:

  • 法人税と所得税の二重課税による税負担の増加

  • 株主総会の開催や書類手続きなど設立や維持コストがかかる

支店 (Branch)

支店では、日本法人のアメリカ支店として登記することができます。日本で既に開業している事業をアメリカ進出して販路拡大を狙う場合などに適しています。事業規模が拡大した場合は、法人への組織変更の検討の余地があります。

メリット:

  • 会社設立と比較して難易度が低い

デメリット:

  • アメリカでの訴訟や賠償を日本の親会社が負担するリスクがある

駐在員事務所 (Representative Office)

アメリカでは「駐在員事務所」という事業形態は認識されていないため、州政府での登記が不要であることが多いです。そのため、商業活動が行えず、活動が限定されます。

メリット:

  • 本格的な事業開始に備えた営業準備や情報収集として活用できる

  • 日米租税条約上では恒久的施設として捉えられていないため、課税対象から外れる

デメリット:

  • 商業活動を行えず、活動内容が限定される

共同事業体 (Partnership)

共同事業体は、2人以上または2つ以上の会社が合弁事業を行う際に利用される形態です。共同事業体には2種類あり、全社員が無限責任である「General Partnership(一般パートナーシップ)」と、有限責任を負う有限社員で構成される「Limited Partnership(有限パートナーシップ)」があります。

メリット:

  • 税務上、法人課税されない(個人所得として税務申告の義務あり)

デメリット:

  • 会社が倒産した場合など、一般パートナーシップは個人財産をもって残りの債務を返済する義務を負う

有限責任会社 (LLC : Limited Liability Company)

有限責任会社は株式会社の一種です。C-Corporationと同様に、事業を行う州で定款を登録することで設立できます。法務上は有限責任を負い、税務上は課税またはパートナーシップとしての課税のいずれかを選択することができます。

メリット:

  • パススルー課税により、収益は個人所得として課税される(法人税との二重課税を回避できる)

  • 多くの州では所有者が一人のみの個人事業としてのLLCも許可されている

  • 社員数に上限がない

デメリット:

  • 一部の業種(銀行や保険など)はLLCの事業形態を取ることができない

個人事業主 (Sole Proprietorship)

個人事業主とは、法人化されていない事業​​を個人で所有することです。個人で起業する際に多く利用される形態です。

メリット:

  • 登記が比較的簡単

デメリット:

  • 事業の債務が個人債務とみなされるため、事業に何かあった場合に個人資産にまで影響が及ぶ

アメリカで起業するための手順

次に、アメリカで会社を設立する具体的な手順をご説明します。全手続きを完了するには、一般的に1~2カ月要すると言われています。各手順にかかり得るおおよその所要期間も参考にして、計画的に準備を進めていきましょう。

1. 事業形態と業種を決める

はじめに、事業形態と業種を確定します。前章でもお伝えしたように、事業形態が限定される業種もあります。

例えば、個人事業主 (Sole Proprietorship)の場合は登記が簡単である一方、訴訟の多いアメリカで個人と事業が一体となっているビジネスを開始することは大きなリスクを伴います。個人で起業したいと考えている方は、一人のみの個人事業としても認可されている有限責任会社(LLC)も検討するのも良いでしょう。

推定所要期間:~1カ月

2. 事業計画書を策定する

ビザの申請や、事業拡大に向けて金融機関への融資を依頼したり、出資者を募る場合に英文での事業計画書(ビジネスプラン)が必要になります。会社登記の手続きを進めると同時に、事業計画書の準備も必要です。事業計画書の作成にあたっては、次の要点を含めた構成にするようにしましょう。

  • 経営理念

  • 会社概要

  • 製品とサービス

  • 市場分析

  • マーケティング戦略

  • 財務計画と予測

外国人としてアメリカに滞在するには、ビザの取得が欠かせません。

アメリカでの起業をスムーズかつ成功に導けるよう、事業計画書の作成には専門家のアドバイスを仰ぐのが望ましいでしょう。

推定所要期間:~1カ月

3. 会社登記の手続きをする

次に、事業を所在地であるアメリカの州において事業設立の登記を行います。アメリカは連邦国家であるため、会社登記はすべて州政府の管轄となり、連邦政府への登記は不要です。州ごとに手続きの方法が異なる場合がありますが、会社登記の概要は下記の通りです。

<必要情報>

  • 法人名

  • 法人の所在地

  • 所有権、経営構造、または取締役

  • 登録代理人情報

  • 株式数と価値(法人の場合)

<必要書類>

  • 登記簿

  • 定款書

  • 初期の議事録 など

<費用>

  • 最低資本金:ほとんどの州では最低資本金制度なし

  • 現地法人設立の場合:約3,000~6,000米ドル

  • 支店設立の場合:約3,000〜4,000米ドル

推定所要期間:最短一週間~数週間程度

4. 事業用銀行口座を開設する

アメリカで事業をスタートするにあたって、現地のビジネス用銀行口座の開設は不可欠です。アメリカで事業用銀行口座を開設するには、以下のような書類が必要になります。

  • EIN (Employer Identification Number:雇用主証明番号)

  • 会社の設立書類

  • 所有権契約

  • ビジネスライセンス(税務局に対する事業開始の許認可)

Wiseなら、アカウント内で[NumberCurrencyHoldBiz]種類の通貨の保有が可能。個人アカウントでも法人アカウントでも登録は無料です。銀行よりも安く海外送金でき、米ドルの送金を受け取れる口座情報も取得できます。

アメリカ国内での銀行振込や米ドルでの受け取りなど、ビジネスを始めるために必要不可欠な外貨でのやり取りを簡単に行うことができます。

<Wise法人アカウント>

  • 国内振込のようにUSD建ての送金が手数料無料で受け取り可能

  • USD口座以外にも9の口座情報が取得可能

  • アカウント内で手軽に多通貨へ両替でき、簡単・スピーディーな海外送金

なお、2025年2月3日現在、USDの口座情報はWiseアカウントを作成した時期によって制限が設けられています。詳細はお問い合わせください。

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<Wise個人アカウント>

Wise個人アカウントでも、法人アカウントと同様にマルチカレンシー口座を無料で開設できます。

日本からアメリカに移住したばかりの頃は、日本からアメリカへ生活資金を海外送金したり、日本円から米ドルへ外貨両替する機会も多いでしょう。アメリカに移住してすぐに米ドルでのお金のやり取りができるように、Wise(ワイズ)のマルチカレンシー口座でUSD口座情報を取得するしておくと便利です。

移住後はWiseの登録住所をアメリカに変更する手続きが必要があるため、ご注意ください。

推定所要期間:約一週間(Wiseマルチカレンシー口座開設の場合)

5. オフィスを見つける

アメリカで法人登記するには、アメリカ国内に住所が必要となります。

Regus(リージャス)やServcorp(サーブコープ)のような、法人の住所として登録できるバーチャルオフィスやレンタルオフィスを利用すると、大幅に初期費用を削減することができます。

推定所要期間:約一週間

6. 事業保険に加入する

訴訟大国であるアメリカでは、事業保険への加入が推奨されます。事業保険加入によって、職場での事故や賠償請求、盗難、災害、訴訟費用、書類の紛失、事業中断といった予期せぬ不運から事業や個人資産などを守ることができます。

例えばニューヨーク州では、州法の定める最低限の種類・内容の保険加入が義務付けられています。

  • 労災補償

  • 障害保険

  • 失業保険(加入義務ありと判断された場合)

  • 自動車保険

法人の保険加入義務の有無は各州法によって異なるため、必ず法人の住所を置く州の法律をご確認ください。

推定所要期間:保険会社によって異なる

非居住者が受けられるサポートはある?

言語はもちろん、法律や商慣習などが異なるアメリカで日本人が起業するにあたっては戸惑うことが多くあるでしょう。現地の情報に精通している組織や専門家のサポートを受けて、できる限りスムーズに法人を設立できるように準備を進めていきましょう。

  • JETRO(ジェトロ:日本貿易振興機構)

世界76カ所に所在するJETROでは、アメリカ進出を始めようとする人に向けて、ウェブサイト上でアメリカの税制や法務など充実したコンテンツの提供をはじめ、アメリカ進出の実務相談もすることができます。アメリカ国内にはアトランタ、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ヒューストン、ロサンゼルスに事務所を構えており、現地の最新情報も入手することができます。

  • 在外公館 日本企業支援窓口

外務省では、海外のほぼ全ての在外公館で日本企業支援窓口を開設しており、駐在する日本企業支援担当官への相談や支援を依頼することができます。商慣習や文化の異なる海外では思わぬトラブルも起こりがちです。問題に発展する前に、積極的に利用してサポートを受けましょう。

  • 法律事務所

日本からの進出の多いアメリカでは、日本語対応の法律事務所もあります。法制度の異なるアメリカにおいては、紛争が生じる可能性も視野に入れた対策が必要です。

英文契約書の作成や紛争対応、コンプライアンス、個人情報保護法など、企業が抱えうる法務の問題に関して信頼のおける弁護士を見つけておくと良いでしょう。

  • 法人設立代行会社

アメリカへの進出や法人登記、ビザ取得といった一連の支援を受けられる日本語対応の法人設立代行会社もあります。法人設立代行会社と一口に言ってもサービス内容はさまざまです。安価なオンラインでの簡易的なサービスからビザの取得サポート、税務対策などのトータルサービスを提供するサービスまであるため、どこまでのサービスが必要となるのか、予算やサービス内容をよく熟考して決める必要があるでしょう。

アメリカで起業する費用はいくらかかる?

事業内容や事業規模、法人を設立する州によってもアメリカで起業するにあたって必要となる費用はさまざまです。ここでは、法人設立時にかかり得る関連費用について見ていきましょう。

  • 資本金

アメリカでは、ほとんどの州で最低資本金の規定はありません。1セントからでも会社を設立することができます。

  • 登記申請料

登記申請料は州によって異なりますが、約10,000~50,000米ドル程度かかります。

例えば、デラウェア州の場合、基本料金は89米ドルです。発行株式の額面額合計が一定以上の場合には追加料金が発生します。

登記申請に関しては、通常弁護士や法人設立代理人へ依頼し、所要期間や費用を事前に確認しておくことが望ましいです。

  • 法人設立代行会社費用

慣れないアメリカで煩雑な手続きや税制の理解、ビザ取得などをすべて自分でやろうとすると想定外に時間がかかってしまい、ビジネスに影響が出てしまう可能性もあります。

スムーズに設立を進めたい場合は、このような法人設立の一連の手続きを一任できる代行会社へ依頼するのも一つの方法です。アメリカ現地の法令や税制、ビザ手続きなどに明るい法人設立代行会社へ依頼することで、適切な助言や最新の情勢などの情報も手に入りやすく、事務負担が軽減でき、滞りのない手続きに繋がるでしょう。法人設立代行会社の一般的な費用は約3,000米ドル程度が相場となります。

アメリカで留学生は起業できる?

アメリカでは、大学に通う外国人留学生でも起業することが可能です。実際に、世界的な実業家であるイーロン・マスクやモデルナ創業者のヌーバー・アフェヤンも、外国人として留学中にアメリカで起業しています。

世界中からエリートが集まるアメリカの大学留学中に仲間と起業したいと考える方もいるかもしれません。アメリカの学生ビザであるF-1ビザの保有者の場合、Optional Practical Training (OPT)に申請することにより、卒業前または卒業後に大学の専攻に関連した仕事に 最長一年間、一時的に就労することができます。ただし、在学中のOPTでの就労は週20時間以内に制限されており、さらに、OPTでの仕事は専攻分野に直接関連している必要があります。その点に注意しましょう。

OPTの期間終了後も企業で就労したい場合は、就労ビザへの切り替えの検討が必要です。詳細は、アメリカ国土安全保障省 (United States Department of Homeland Security)のページをご確認ください。

まとめ

日本と比較して圧倒的なスタートアップ企業数を誇るアメリカは、日本での起業とは違った刺激や出会いがあるはずです。文化や商習慣に慣れるためにも、予算が許す限り、専門家からの適切なサポートを受けながら、成功への道を掴んでいきましょう。

アメリカ起業のように、グローバルに展開する起業家の方にはWiseのマルチカレンシー口座の開設がおすすめです。アメリカ国内で法人アカウントに登録していると、USDの銀行口座情報を取得でき、アメリカ国内からの振込みも手数料無料で受け取ることができます。Wise法人口座は登録無料ですぐに使えるため、まだ開設していない方はぜひチェックしてみてください。

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出典: