フィリピンで日本人が起業するには?会社設立のプロセスを解説
アジア圏でトップの経済成長率を誇るフィリピン。特に2010年以降堅実な政治運営が続き、その中で安定した経済成長を遂げています。そんなフィリピンにビジネスチャンスを見出し、現地で起業しようと考えている人もいるのではないでしょうか。今回の記事では、そんな方に向けて、フィリピンでの会社設立の方法を解説していきます。
また、海外進出を目指す法人に便利なWiseの法人口座についても合わせてご紹介していきます。Wiseの法人口座ではお得に海外送金や外貨両替ができるなど、ビジネスに便利な機能がいろいろと利用できます。
それでは早速、フィリピンで日本人が会社を設立するための重要ポイントを見ていきましょう。
非居住者でもフィリピンで起業できる?
非居住者が起業できる業種に制限はある?
ビザは必要?
起業をサポートしてくれるサービスはある?
海外での利用に便利なWiseの法人口座がおすすめ
外国人でもフィリピンで起業できる?
はい、外国人でも条件を満たせばフィリピンで起業できます。ただし、どんなビジネスでも開けるわけではなく、例えば下記の業種は外国人による投資及び所有が憲法で禁じられています。なお、ここでいう「外国人」とはフィリピンのパスポートを持っていない人のことを指します。
マスメディア
(払込資本金額が2500万ペソ未満の)小売業
公共事業(電力、水道など)
民間の探偵、警備員、警備保障会社の組織、運営
小規模鉱業
外国資本の投資や所有が禁止されている業種については政府が発行している「ネガティブリスト」で確認可能です。定期的に更新されているリストですので、常に最新の情報を確認することをおすすめします。
Executive Order No. 175, s. 2022(フィリピン政府発表)
第 12 次外国投資ネガティブリスト(日本貿易振興機構発表)
他にも外資100%で起業できる業種には限りがあるなど、いくつか制限があります。詳しくは後述します。
フィリピンの市民権やビザは必要?
外国人がフィリピンで会社を設立する際、市民権の取得は不要ですが、ビザの取得が求められることはあります。それは現地に行って会社の運営をする場合です。会社を設立するだけで本人は現地で就労せず、会社の経営に関与せずあくまで株主という立場を取るのであればビザはいりません。
起業したらフィリピンでビザは取得できる?
上述の通り、現地で働く場合には適切なビザが必要です。フィリピンで取得できる就労ビザは何種類かありますが、一般的には「雇用ビザ」を取得します。これはフィリピンの会社と雇用契約書を結んでいる人に発給されるビザです。自身で起業する場合にはまず会社を設立し、その会社の従業員あるいは役員として自身を任命することで申請が可能になります。
なお、フィリピン国内で外国人を雇用する場合には外国人雇用許可証(AEP)も必要です。そのため、ビザ取得までの流れは「会社設立」→「AEP取得」→「ビザ申請」となります。
フィリピンで開ける事業形態の種類
フィリピンで起業する際には下記のいずれかの事業形態を選んで会社を設立します。なお、ここでご紹介しているのは非居住者として設立できる会社の形態のみです。
株式会社(Domestic Corporation)
Domestic Corporationは日本の株式会社にあたる事業形態です。日本企業がフィリピンに現地法人を設立するときによく選ばれます。業種によって外資100%が許可されているものと、そうでないものがあります。
メリット
株式を発行して資金集めができる
大規模な事業にも対応できる
デメリット
最低5名の取締役が必要になる
株主総会や関連書類の作成などが発生する
ワンパーソンコーポレーション(One Person Corporation)
これは2019年からフィリピンで導入された事業形態で、名前の通り1人の株主によって運営される株式会社です。中小企業や新規事業を開くときに利用しやすく、新たなビジネスの参入を呼ぶこむことを目的に導入されました。株式会社と同様、中には外資100%が許可されていないものがあります。
メリット
1人でも会社設立ができる
市場テストやスモールスタートがしやすい
デメリット
大企業には向いていない
他の投資家を迎えることはできない
駐在員事務所(Representative Office)
駐在員事務所は主に情報収集、本社製品およびサービスの販売促進、品質管理を目的としており、そこで直接的な収益活動をすることはできません。設立のプロセスが比較的シンプルで、フィリピン進出に向けまず市場調査がしたいときに向いています。
メリット
現地の情報収集ができる
設立がしやすい
デメリット
利益を生むことはできない
資金は日本本社に拠る
支店(Branch Office)
日本にある本社の延長として会社を設立する事業形態です。税制面やその他制度に関してフィリピンの現地法人とは異なる扱いになります。あくまで本社帰属のため、法的責任は本社が負うのも支店の特徴です。
メリット
大企業に向いている
本社の意思決定が反映されやすい
デメリット
負債や法的問題のリスク管理が必要になる
フィリピン法人と同じメリットは享受できない
フリーランス/個人事業主
事業形態とは異なりますが、フリーランスや個人事業主としての活動も可能です。会社を持たずに仕事ができるため、柔軟な働き方ができます。ただし、フィリピンの就労ビザは会社がスポンサーになることが前提のため、フリーランスや個人事業主の場合は就労ビザの取得は難しいでしょう。
メリット
自由な働き方が目指せる
法人税よりも税負担が軽くなる
デメリット
就労ビザの取得は難しい
仕事の安定性が低い
フィリピンで起業するときの手順
ここでは、フィリピンで起業するときのプロセスを順を追って説明していきます。具体的には株式会社を設立するときの方法ですが、そのプロセスは大まかに①事前準備、②会社登記、③登記後各種手続きの3つに分かれます。すべてを終えるまでには一般的に3~6ヶ月かかるといわれています。それぞれの手順を確認し、計画的に準備を進めていきましょう。
1. 事前準備
会社の登記を申請する前に、まずは下記の手順を踏んで準備を進める必要があります。
事業形態・業種を決める
事業計画書を策定する
会社名を決める
会社住所を決める
定款・付属定款を作成する
資本金を準備する
最初に事業形態、そして業種を決めます。前述の通り事業形態によっては100%外資での設立ができない業種もあるので、「ネガティブリスト」を見ながら検討していきます。フリーランス、個人事業主としてフィリピンに進出するなら下記で説明するような煩雑な手続きはほとんど不要ですが、ビザ取得や信用獲得の難しさを考えたら法人を設立する方がリスクが少ないでしょう。
どんなビジネスをするのかを決めたら、それを具体的に事業計画書に記していきます。事業内容だけでなく資金計画や市場分析といった詳細を示す必要があるため、このステップにはしっかり時間をかける必要があるといえます。また、会社名を決めたらそれが使用可能かを証券取引委員会(SEC)のシステムを使って確認しましょう。
そして会社の登記にあたっては定款の作成が必要です。定款には会社の住所を記載しなければならないため、会社住所を決めなければなりません。これらのステップを踏んで起業を進めつつ、資本金の準備も進めていきましょう。フィリピン国内の銀行に一時口座を開設、そこに資金を入れて送金証明書を受け取ります。
推定所要時間:1~1.5ヶ月
2. 会社登記を行う
すべての準備が整ったら、会社の登記を行います。会社登記にはSECに定款などの必要書類を提出し、審査を受ける必要があります。審査が完了したら登記費用を支払い、納付書を取得しましょう。申請が承認されたらSEC登記証書が発行され、晴れて法人格の獲得となります。
推定所要時間:1~2ヶ月
3. 登記後各種手続き
無事登記が完了し会社が設立できても、まだ手続きは終わりではありません。登記後、下記の手続きを済ませる必要があります。
設立総会を実施する
税務署に登録する
地方自治体に登録する
労働雇用省に登録する
社会保険まわりを整える
本口座を開設、中央銀行に登録する
まずは設立総会を実施し、取締役の任命と役員の選出を行います。その内容は会社報告書にまとめ、SECに提出します。そして、会社として動き出したら各種機関への登録が必要です。税務署、地方自治体、そして労働雇用省に登録し各種手続きを済ませましょう。また、従業員を雇用し始めたら、社会保険の整備が必要です。フィリピンの社会保障システム、住宅開発相互基金、健康保険組合に登録をして、 従業員の社会保険を整えます。
法人格を獲得したら、銀行で本口座を開設し一時口座に入れておいた資金を移します。そして外国からの資本を中央銀行に登録し、銀行システムを通じて外貨の管理ができるようにします。
推定所要時間:1~2ヶ月
ちなみに、海外送金を予定しているならWiseの法人アカウントの開設がおすすめです。Wiseとはオンラインで複数外貨の両替や送金ができるプロバイダーで、フィリピンを含め対応している国であれば現地の法人口座を開くこともできます。フィリピンペソの送金及び受け取りもできます。現地で管理している資金を日本の口座に移したり、反対に国内の資金を送金するときに便利です。
Wiseの海外送金は手数料が0%~と非常に安く抑えられており 、銀行などの他の金融機関で海外送金するよりお得に取引ができる可能性があります。ちなみに海外送金ができる国は140 カ国、保有できる通貨は40以上にも上ります。海外でビジネス展開を考えているなら、ぜひ開設を検討してみてください。また、個人アカウントを設立すれば自身が移住する際に自分の資金を海外送金できて便利です。手数料を抑えて両替や送金ができるだけでなく、Wiseのデビットカードがあれば海外での支払いにも使えます。
非居住者向けのサポートはある?
知らない土地で起業するときには、法律や制度の違い、商慣習や文化など知っておかなければならないことはたくさんあります。必要に応じて、現地の情報に明るい専門家や組織のサポートを受け、スムーズな会社設立を目指しましょう。フィリピンで起業するなら、下記の組織が助けになってくれます。
JETRO(日本貿易振興機構)
JETRO(ジェトロ)は日本と各国の相互貿易・投資の促進を目指す政府関連機関です。フィリピンには前身組織が1956年から事務所を置いており、日本企業がフィリピンに進出する際には起業支援やビジネス情報の提供を行っています。
フィリピン貿易産業省(DTI)
フィリピン政府の機関で、国内外の投資促進や中小企業支援を行っています。起業手続き、ビジネス登録、各種許認可に関する情報提供を受けることができます。
フィリピンで会社設立するのにかかる費用
ここでは、フィリピンで会社を設立するのにかかる費用をご紹介していきます。事業内容やその規模、起業する場所によって細かな費用は変わってきますが、いずれの場合も下記の費用は必ずかかります。
資本金
フィリピンの会社法では、会社設立時の資本要件は外国資本の割合によって変わってきます。外国資本が40%を超える場合には最低払込資本要件は20万アメリカドル(約3,000万円※)です。ただし、下記のいずれかの条件を満たす場合には10万アメリカドル(約1,500万円※)に減額されます。
科学技術省が定める最新技術を利用していること
革新的新興企業法に基づき、「スタートアップ」または「スタートアップ支援機関」として承認されていること。
フィリピン人従業員を15人以上雇用していること
※2025年3月30日時点でのレートを参照(1ドル=149.81円)
各種登録料
会社の登記、各関係機関への登録には事務手数料がかかります。
商号(会社名)予約料:100ペソ(約261円※)
SEC登録料:授権資本額の1%の1/10にその20%をプラスした金額
※授権資本額=会社で決められた、発行できる株式の総数のこと
調査手数料:登録手数料の1%
付属定款の手数料:210ペソ(約548円※)
地方自治体登録費:自治体により異なる
※2025年3月30日時点でのレートを参照(1ドル=149.81円)
また、もしエージェントや代行会社に各種手続きの依頼をする場合には、そこに支払う費用も発生します。
手続き開始から起業までにかかる時間は?
「フィリピンで起業するときの手順」の段落でも触れましたが、一般的にフィリピンで会社設立する際には3~6ヶ月かかります。幅があるのは各種手続きにかかる時間が条件やそのときどきの状況によって異なるからです。特に登記申請、各関係機関への登録にかかる時間は予測しづらく、想定よりも時間がかかってしまうこともあります。そのため、時間には余裕をもって各プロセスを進めていきましょう。
留学生はフィリピンで起業できる?
フィリピンに留学するときには学生ビザ(9Fビザ)か特別就学許可証(SSP)を取得する必要がありますが、いずれの場合も入国管理局からの許可なしに利益を生む雇用に従事することが禁じられています。これには従業員として働く場合だけでなく、事業運営への参加や株主として受動的に収入を得る行為も含まれます。この規定は、2015年に発行された移民覚書通達第SBM-2015-007号の第2条に明記されています。
そのため、外国人留学生が学生ビザのままフィリピンで起業することはできません。適切なビザに切り替えてから会社設立へと動き出すことになります。
まとめ
今回の記事では、フィリピンでの起業について詳しく解説してきました。フィリピンでは条件がいくつかあるものの、外国人でも会社設立が可能です。アジア圏でもトップの経済成長率を誇るフィリピンなら、新たなビジネスチャンスを開拓できるかもしれませんね。
フィリピンを含む海外へのビジネス展開を考えている起業家の方には、Wiseの法人口座の開設がおすすめです。登録から実際の取引までオンラインですべて完結、海外送金の際には安価な手数料で取引ができます。これから海外進出を考えている人はぜひ検討してみてください。