ドバイで日本人が起業するには?会社設立のプロセスを解説
世界中の起業家が集まる都市、ドバイ。アラブ首長国連邦を構成する7つの首長国のひとつで、その中でも金融や経済の中心と呼ばれる大型都市です。ドバイでは自由貿易地区が数多く設置されており、100%外資による企業設立が認められているため、海外の起業家が進出しやすくなっています。また、法人税が原則かからず、税率も他国より低く設定されているなど、ビジネスに有利な条件が整っている点も人気の理由です。今回の記事では、そんなドバイで日本人が起業する方法について詳しく説明していきます。
あわせて、これから海外進出を目指す法人企業におすすめのWise法人口座についてもご紹介していきます。Wiseの法人口座ではお得な手数料で海外送金ができたり、現地の銀行口座が開設できたりとビジネスに役立つ機能が盛りだくさんです。
それでは早速、ドバイで外国人が会社設立する際のステップを見ていきましょう。
非居住者でもドバイで起業できる?
非居住者が起業できる業種に制限はある?
ビザは必要?
起業をサポートしてくれるサービスはある?
海外での利用に便利なWiseの法人口座がおすすめ
外国人でもドバイで起業できる?
答えは「イエス」です。先述のようにドバイには自由貿易地区があり、この範囲内であれば100%外資による会社の設立が認められています。法人税もほとんどのケースでかからないので、外国人投資家にとってドバイは非常に魅力的なマーケットです。また、制度面以外にも、ヨーロッパとアジア、そしてアフリカにアクセスしやすいという地理的な利便性もドバイの魅力のひとつです。
自由貿易地区以外の本土(mainland)で起業することも可能ですが、その場合には現地パートナーが求められることがあります。アラブ首長国連邦全土に展開できるためビジネスチャンスが広がる一方、業種によってはわざわざ自由貿易地区の外に出る必要がないこともあります。ビジネスプランをよく練り、どこに進出するか慎重に検討しましょう。ちなみに、主に国際的な取引や資産管理を目的としてドバイでの起業をする場合、現地にいなくても起業はできます。ただし、アラブ首長国連邦内でのビジネス活動はできません。
ドバイの市民権やビザは必要?
「起業する」だけであれば必ずしもドバイに滞在する必要はないので、市民権やビザがなくても問題ありません。例えば出資だけして現地での業務は他の人に任せる場合などです。しかし、実際に現地に赴きビジネス活動を行う場合には滞在許可及び就労許可が必要なので、適切なビザを取得する必要があります。
関連記事を読む:アラブ首長国連邦の通貨完全ガイド
起業したらドバイでビザは取得できる?
上述の通り、アラブ首長国連邦内でビジネス活動を行うためには適切なビザが必要です。そのため、「起業したらビザが取得できる」のではなく、「起業するためにビザが必要」と考えるべきでしょう。ドバイでの起業を検討している場合、主に下記のビザが候補になります。
ゴールデンビザ(Golden Visa)
投資家、起業家、科学者、優秀な学生や卒業生、人道的活動家、最前線で活躍する専門家を対象とするビザで、5年もしくは10年の滞在が可能です。スポンサー不要の一方、申請にはすでに特定の分野で国際的な業績を残している必要があります。
投資家ビザ(Investor Visa)
ドバイでのビジネス設立や不動産投資を行う外国人向けのビザです。投資の内容によって滞在期間は2~3年と変動します。
グリーンビザ(Green Visa)
フリーランスや自営業者、投資家向けの5年間の滞在ビザです。スポンサーは不要ですが、すでにアラブ首長国連邦内で商業活動や自営業をしており、一定の収入を得ている必要があります。
なお、ビザは改正や変更が行われることが頻繁にあります。下記のアラブ首長国連邦の公式ウェブサイトで常に最新の情報を確認することをおすすめします。
Visa and Emirates ID | The Official Portal of the UAE Government
ドバイで起業できる事業形態の種類
アラブ首長国連邦では、非居住者でも開設できる事業形態が複数あります。自由貿易地区のみで設立できる形態、本土含めて設立できる形態とがありますので、ビジネスの目的や規模に応じて選ぶようにしましょう。
フリーゾーンエスタブリッシュメント/Free Zone Establishment (FZE):
1人の株主によって設立される会社で、個人・会社のいずれも株主になることができます。ドバイの自由貿易地区のみで設立可能です。
メリット
外国人が100%所有できる
所得税、法人税が免除される
単独出資のため柔軟な意思決定ができる
デメリット
アラブ首長国連邦本土でのビジネスはできない
自由貿易地区によっては業種が限定される
フリーゾーン会社/Free Zone Company (FZCO)
こちらも自由貿易地区で設立できる会社の形態のひとつです。最低2名の株主(個人でも法人でも可)により設立あるいは登記される会社です。
メリット
外国人が100%所有できる
所得税、法人税が免除される
複数人(50人以上)に出資してもらうことができる
デメリット
アラブ首長国連邦本土でのビジネスはできない
自由貿易地区によっては業種が限定される
非公開有限責任会社/Private Joint Stock Company (PrJSC)
アラブ首長国連邦で最も一般的な会社の形態で、最低3人以上の株主により設立されます。ちなみに、株式の51%以上がアラブ首長国連邦の国籍者によって所持されていなければなりません。Private Limited Liability Company(PrLLC)とも呼ばれ、自由貿易地区以外も進出可能です。
メリット
アラブ首長国連邦内の市場で自由に取引できる
現地法人としての信用度が高い
税務登録がしやすく従業員雇用も柔軟にできる
デメリット
居住ビザ・オフィス設置が求められる
株式の一般公開はできない
設立手続きがやや複雑
公開有限責任会社/Public Joint Stock Company (PJSC)
Public Limited Liability Company(PLLC)とも呼ばれ、株式を公開して一般投資家から資金を調達できる法人形態です。この形態は自由貿易地区を含むアラブ首長国連邦全土で展開できます。ただし、設立には10人以上の設立メンバーと3人以上の取締役が必要であり、会長及び取締役の半数以上はアラブ首長国連邦の国民である必要があります。また、会長及び取締役によって51%以上の株式が所有されていなければなりません。
メリット
株式公開により大規模な資金調達ができる
ブランドと信用力の向上が図れる
アラブ首長国連邦本土にも展開できる
デメリット
設立コストが高い
現地の人の協力が求められる
設立・管理手続きが複雑かつ時間がかかる
情報開示義務が重く、透明性が求められる
支店
すでに設立済みの会社の支店を進出させる形態で、アラブ首長国連邦内の自由貿易地区にて設立可能です。アラブ首長国連邦国内の会社、国外の会社のいずれでも進出できます。
メリット
親会社の名前で活動できる
本社の方針で経営できる
デメリット
アラブ首長国連邦の法人ではないため、公共案件等で不利な場合がある
本社が法的責任を負う
フリーランス/個人事業主
厳密にいうと事業形態ではありませんが、フリーランスもしくは個人事業主という形もあります。ドバイでフリーランス、個人事業主として働くには「フリーランスライセンス」、「個人事業主ライセンス」が必要です。
メリット
低コストで始められる
単独のため柔軟な意思決定ができる
デメリット
対応可能な業種が限られる
信用が弱い場合がある
ドバイで起業するときのステップ
この段落では、ドバイで会社を設立をするときのステップを解説していきます。自由貿易地区でフリーゾーン会社(FZCO)を設立すると仮定し、それぞれのプロセスにかかる時間を含め解説していきます。
1. 自由貿易地区を選ぶ
ドバイには自由貿易地区が複数あります。「Media City」「Science Park」「Design District」などと分かれているので、ご自身のビジネスの内容に合わせて選びましょう。
推定所要時間:1~3日
2. 会社名の決定及び確認
どの自由貿易地区で会社設立をするか決めたら、次に会社名を考えましょう。すでに存在する会社名を使うことはできないので、登録の前に重複がないかを各自由貿易地区当局もしくは経済開発庁に確認します。ちなみに、屋号には「Abu DhabiやUnited Arab Emiratesを入れない」など細かいルールがあります。違反にならないようにルールは事前に確認しておきましょう。
推定所要時間:1~2週間
3. 事前認証を受ける
会社登記の本申請に向けて、まずは事前認証(initial approval)を受ける必要があります。そのためには下記の書類を準備し、提出します。
記入済み申請書
事業計画書
株主、取締役のパスポートのカラーコピー
株主、取締役の署名見本
(法人の場合)監査済みの財務報告書2年分
(個人の場合)銀行からの身元保証書
(個人の場合)現スポンサーからの「異議なし証明書(Non Objection Certificate)」
ユニット権利書
意向表明書
原本及び公証済みの登記識別コードフォーム
推定所要時間:2~3週間
4. 会社登記申請
事前認証が下りたら、いよいよ本申請です。この段階で登記申請料とライセンス料を支払わなければなりません。支払いが終わったら、下記の書類を提出します。
登録申請書
責任者を任命する取締役会決議(公証および認証済み)
責任者に与えられた委任状(公証および認証済み)
定款(公証および認証済み)
責任者の見本署名(公証および認証済み)
責任者のパスポートサイズの写真(白背景)
株式資本情報
推定所要時間:2~3週間
無事登記が終われば、当局によって商業ライセンスが認められます。
非居住者向けのサポートはある?
ドバイでは外国人起業家に向けたサポートが充実しています。困ったときには、ぜひ下記の窓口に相談してみてください。
自由貿易地区当局によるサポート
多くの自由貿易地区では当局によるサポートを受けることができます。現地に行かずともリモートで会社設立ができたり、ビザ取得のサポートをしてくれたりと外国人起業家にうれしいサービスがいろいろとあります。
例:International Free Zone Authority(IFZA)、Ras Al Khaimah Economic Zone(RAKEZ)
ドバイ経済産業省
会社設立に関する公的な規制や制度の確認ができます。ビジネスにまつわる情報提供も多く、ドバイに進出するなら一度はチェックしておきたいサイトです。
Dubai Department of Economy and Tourism
法人設立代行会社
ドバイには多数の外国人向けの法人設立サポート業者があります。基本的には英語対応ですが、中には日本語対応している業者もいます。主なサービス内容は会社登記代行、バーチャルオフィス提供、銀行口座開設支援などです。
例:MIRAJ Management Consultants JP(日本語対応可)、Virtuzone、Commitbiz LLC - Dubai
ドバイでの会社設立にかかる費用
ドバイでの会社設立にかかる費用は条件によって大きく変わります。自由貿易地区内かそれとも本土なのか、業種は何か、オフィスは利用するのか、など費用を左右する要素はたくさんありますので、自身の状況に応じて算出する必要があるでしょう。
参考までに、International Free Zone Authorityでビザ取得なしで会社設立した場合のパッケージ価格は12,900AED(約52万円*)です。一方、Meyden自由貿易地区の場合、ライセンス料は1年間で15,000AED(約60万円)、登記料は5,000~10,000AED(約2~40万円)となっています。
ドバイ現地での支払いにはWiseの法人アカウントの開設がおすすめです。Wiseとは複数外貨の両替や送金ができるオンラインプロバイダーで、アラブ首長国連邦の通貨であるディルハムを含む40以上の通貨を保有できます。
利用できる通貨の多さだけでなく、その手数料の安さもWiseを利用するメリットのひとつです。Wiseの海外送金は手数料が0.73%~と非常に安く抑えられており 、銀行などの他の金融機関で海外送金するよりお得に取引ができる可能性があります。ちなみに海外送金ができる国は140 カ国です。
ただし、2025年7月現在、Wiseはアラブ首長国連邦内に住所を有する人に対して口座の提供を停止しています。現地に移住したあとにはアカウント開設ができない状況になっているため、日本にいるうちに口座開設をすることをおすすめします。
*1 AED=0,0004 JPYで計算
起業までにかかる時間は? 会社の登記手続きにあたって、最も時間がかかるのは事業計画の策定と必要書類の準備です。事業計画書の中で、自身のビジネスが利益を生むものであり、継続していけるものであることをきちんと説明するために、事前にしっかりとビジネスプランを練っておく必要があります。「ドバイで起業するときのステップ」の段落で推定所要時間を書いていますが、これはあくまですでに堅固なビジネスプランができあがっている場合です。事業計画を立てるところを含めれば、さらに時間がかかるでしょう。
留学生はドバイで起業できる? アラブ首長国連邦の学生ビザは基本的に学業を目的とした人向けであり、通常の労働や商業活動はその目的の中に含まれていません。働くこともできますが、就労するにはMinistry of Human Resources Emiratisation(人材開発省)からの就労許可が必要です。そしてその種類は「part time(パートタイム)」「temporary(臨時)」「training(トレーニング)」の3つです。自分でビジネスを設立して商業活動をしていくとすると、「学生ビザ+就労許可」では難しいと解釈できます。
まとめ 今回の記事では、ドバイで会社を設立するときのステップやポイントについて詳しく解説してきました。ドバイは自由貿易地区では法人税が原則かからないなど、ビジネスを始めやすい条件が整っています。新たなビジネスチャンスを探しているなら、ぴったりの国かもしれませんね。
ドバイを含む海外へ進出を考えている起業家の方には、Wiseの法人アカウントの開設がおすすめです。登録から実際の取引までオンラインですべて完結、海外送金の際には安価な手数料で取引ができます。これから海外進出を考えている人はぜひ検討してみてください。