日本でおすすめのマルチカレンシー口座は?
マルチカレンシー口座とは、複数の通貨を同時に1つのアカウントで管理できる口座のことです。日本では、全ての銀行でマルチカレンシー口座を開設できるというわけではなく、開設には別に手続きが必要なこともあるので、そのような場合はWiseのような新しい金融サービスの利用も検討しましょう。
この記事では、日本でのマルチカレンシー口座開設について知っておくべきことをわかりやすく、そして詳しく取り上げますのでぜひ参考にしてくださいね。
マルチカレンシー口座とは?
マルチカレンシー口座は、直訳すると「多通貨口座」という意味です。複数の通貨を同時に1つのアカウントで管理できるサービスです。日本の銀行では「マルチカレンシー口座」という表現を使うことは比較的珍しく、みずほ銀行のみずほグローバル口座など一部の銀行にとどまっています。「外貨預金」などの名称で提供されていることが一般的です。
一方で海外ATMや買い物時に外貨のまま引き出し、引き落としができるようなデビットカードではしばしば「マルチカレンシー」なデビットカードと呼ばれることも多いようで、「マルチカレンシー」という表現がより一般的に使われています。
マルチカレンシー口座のメリットは?
各銀行やサービスプロバイダーによって提供サービスは異なりますが、マルチカレンシー口座の一般的なメリットは以下の通りです。
為替レートのいい時(円高の時)に日本円から米ドルに両替しておいてあとで送金したい時(これとは逆に円安の時に米ドルから日本円に両替しておくことも可能)
旅行中に両替手数料を気にせずデビットカードで支払いたい時
世界各地のATMから現地通貨をお得なレートで引き出したい時
お金を預けているだけで外貨ならではの金利で利息を得られること
最もおすすめのマルチカレンシー口座は?
日本で最もおすすめのマルチカレンシー口座はどの銀行やサービスプロバイダーでしょうか?今回は外貨関連サービスに力を入れているSMBC信託銀行(プレスティア)とソニー銀行、そして新しい金融サービスであるWiseを比較対象してみましょう。
Wise | SMBC信託銀行(プレスティア) | ソニー銀行 | |
---|---|---|---|
海外に引っ越しても使える? | 海外に引っ越しても住所変更で同じアカウントを使用可能(※1) | 日本の「非居住者」となった場合、口座の利用が一部制限される | 日本の「非居住者」となった場合、口座の利用が一部制限される |
使える通貨数 | 50種類以上 | 17種類 | 12種類 |
両替手数料 | あり(0.43%~)(※2) | あり(為替レートに含まれる) | あり(為替レートに含まれる) |
海外送金時の為替手数料 | 為替手数料は無料、為替レートはミッドマーケットレート | あり(為替レートに含まれる) | あり(為替レートに含まれる) |
口座維持手数料 | なし | 月額2,200円(税込)(※3) | なし |
外貨建決済可能なデビットカードはある? | あり(※4) | あり(GLOBAL PASS) | あり(Sony Bank WALLET) |
各国の口座情報が取得可能? | 可能(※5) | 不可能 | 不可能 |
SMBC信託銀行(プレスティア)とソニー銀行はどちらも日本の銀行の中では外貨預金や外貨関連サービスに力を入れている金融機関ですが、Wiseは2つの銀行と同等もしくはそれ以上のサービスを提供しています。
2つの銀行とWiseの間には海外への送金の方法やその際にかかる手数料に大きな違いがあります。
SMBC信託銀行(プレスティア)とソニー銀行が提供する送金サービスは、SWIFTを利用したものです。日本の銀行では海外送金にSWIFTを利用するのが一般的ですが、SWIFTを利用した海外送金の場合、最終的にどれだけ手数料がかかるのか(受取人がいくら受け取ることができるのか)は実際に送金が完了するまで分かりません。Wiseでは独自の送金の仕組みを構築しており、送金時に手数料と送金日数の目安がわかるのが銀行とは大きく違う点です。
また、日本の銀行の中では両替レートの中に為替手数料が入っているのが一般的で、為替手数料が実際にいくらかかっているのか分かりにくいというのが一般的です。例えば、実際のレートが1USD=110円の時に、銀行は1USD=111円の両替レートを設定していることがあり、この場合1USDあたり1円の差が両替レートに含まれた「隠れた手数料」となります。一方、Wiseの海外送金時の為替レートはミッドマーケットレートで一般的な銀行のように為替レートに上乗せする形にしていません。
また、SMBC信託銀行(プレスティア)とソニー銀行は日本の銀行法におけるライセンスしか持っていないので、海外に引っ越して日本の非居住者となってしまうと様々な機能が制限されます。例えば、SMBC信託銀行(プレスティア)では日本の非居住者になるとキャッシュカードによるATMでの振込やオンラインバンキングでの国内送金ができなくなりかなり不便です。ソニー銀行では非居住者になるとソニー銀行からの海外送金ができなくなってしまい、お金を日本から移すことが難しくなってしまいます。
一方で、Wiseの場合は日本だけではなく世界中の国・地域でライセンスを取得しているので、引っ越した先の海外でもそのまま使い続けることができます。また、SMBC信託銀行(プレスティア)とソニー銀行は日本の銀行なので海外の現地送金システムに対応した口座情報を提供できませんが、世界中でライセンスを有するWiseは対応通貨について現地で使える口座情報を提供しています。
ただし、Wiseは銀行ではないので、Wiseのアカウント内資金には銀行と異なり金利がつくことはありません。また、オンラインのサービスなので大手銀行のような店頭窓口でのサポートはありません。
(※1)移住先の国・地域で対応している本人確認書類が必要。国・地域によって利用可能なサービスや通貨は異なる。
(※2)通貨によって異なる。
(※3)前月の月間平均総取引残高の外貨部分が20万円相当額以上や前月の月間平均総取引残高が50万円相当額以上などの条件を満たした場合については無料となる。
(※4)1回限りの発行手数料がかかる。日本の場合、1200円。
(※5)対応通貨に限る。
現地の口座情報が手に入るWise
海外との外貨のやりとりが多い方にとって、Wiseには日本の銀行にはない見逃せない機能があります。それは現地に住まなくとも各国の銀行口座情報を取得できることです。
例えば、米ドルの場合は自身のルーティング番号(ABA) と口座情報を取得可能です。米ドル以外にも様々な通貨に対応しており、例えばユーロの場合、自分自身のWiseアカウントと紐づいたSWIFT/BICコードとIBAN情報を取得可能です。これらの口座情報を送金元に伝えれば、送金元がWiseのユーザーでなくとも送金者は銀行口座と同じような感覚で自身に対しての送金が可能です。Wiseで海外の口座情報を取得すれば、海外現地での銀行口座がなくとも給料の受け取りができるわけです。
さらに、ダイレクトデビット(口座自動振替)の設定にも対応しており、口座情報を支払先に共有することで、定期的な資金の引き落としを行う設定が可能です。例えば、出張先のジムの毎月の利用料を現地口座なしに自動引き落としにすることができるのです。現在Wiseのダイレクトデビット機能はAUD、CAD、GBP、EUR、USD残高からの引き落としに対応しています。
今から海外に移住する予定の人にもおすすめです。現地での銀行口座の開設には様々な書類や手続きが必要で、移住してからすぐに口座開設ができるとは限りません。口座開設が完了するまで現地口座でしなければならない家賃の支払いや現地口座でしかできない給与の受け取りができなくなってしまうと非常に不便ですね。そんな時にこそ、渡航前でも日本の本人確認書類で口座開設できるWiseが活躍します。渡航前に現地で使える口座情報がすでにあることは非常に心強いものです。
なお、Wiseで取得できる海外の口座情報は以下の通りです。
ヨーロッパ(ユーロ)のSWIFT/BICコードとIBANコード(Wiseはベルギーでライセンスを取得しているため、IBANコードはBEで始まるものになります。)
ちなみにWiseアカウント内の米ドルはATMでWiseのデビットカードを使って引き出すことができます。日本のユーザーの場合、毎月2回、合計3万円相当額まではATMから無料で現金を引き出すことができます。毎月3回目以降の場合は出金ごとに70 円の固定手数料がかかります。出金額が3万円を超えた場合は出金額の1.75%の変動手数料が発生します(変動手数料と固定手数料両方がかかることもあります)。もちろんATMから引き出さなくとも、買い物で他のデビットカードと同じように決済することもできます。
マルチカレンシー口座の開設方法
SMBC信託銀行(プレスティア)やソニー銀行など外貨預金に力を入れている銀行ではすでに日本円の口座を持っていればオンラインで口座開設できることが一般的です。日本円の口座を持っていなければ、まずはその銀行の口座を開設することが必要です。日本の銀行は非居住者に対する口座開設を厳しく制限しているので、日本の居住者でなければ外貨預金はもちろん、そもそも日本の銀行の口座開設は難しいと考えておく必要があるでしょう。
Wiseも同様で、すでに日本の住所と紐づいているアカウントを持っていればすぐにマルチカレンシー口座が開設可能です。Wiseでアカウント開設後に本人確認が終了したら、Wise上で好きな通貨のマルチカレンシーアカウントと口座情報を取得しましょう。「通貨を有効にする」ボタンからこの操作が可能です。
Wiseではアカウント開設もオンラインで完結します。日本にお住まいの方が必要な本人確認書類はマイナンバーカードだけです(マイナンバーカードがない場合は運転免許証・在留カードなどの他の本人確認書類と過去6か月以内に発行された住民票の写しやマイナンバー通知カードを代わりに提出することも可能です)。本人確認の完了まで大体約2〜3営業日かかると考えておくといいでしょう。
どんな時にマルチカレンシー口座が必要?
マルチカレンシー口座が必要になるケースは大きく二つのパターンに分けられます。一つは投資のため、もう一つは海外でのお金のやり取りのためです。
一つ目の理由から考えてみましょう。外貨預金は、金利がかなり低い日本円の預金よりも高い金利を得られるのが一般的です。為替レートが預入時よりも円安の場合は、「為替差益」と呼ばれる利益を得ることができます。このように外貨預金を上手に活用することでお金を増やすことができます(もちろん減らすリスクもあります)。
もう一つの理由は海外からお金を受け取ったり、海外にお金を送ったりする人に当てはまります。米ドルで送金した人は為替レートのいい時(円高の時)に日本円から米ドルに両替しておけば、あとで送金すれば送金額を節約することができます。これとは逆に円高の時に受け取った米ドルをより円安になってから日本円に両替することで日本円ベースでの受取額を増やすことができます。
銀行によっては、投資商品として外貨建の定期預金などを提供していても、海外への送金や海外での引き出しには制限がついていることもあり、投資に向いている外貨預金を提供しているからといって、海外との外貨のやり取りにも便利とは限りませんので気をつけましょう。例えばイオン銀行では外貨預金を提供しているのにも関わらず、他の銀行への外貨送金が外貨でも日本円でもできません。外貨の受け取りも外貨でも日本円でもできないので、イオン銀行の外貨預金は完全に投資用と言えるでしょう。
逆にWiseは銀行ではないので、日本居住者向けには銀行のようにお金が増やすためのサービスは提供しておらず、様々な通貨間の両替、外貨のままでの送金や引き出しなど後者の機能にフォーカスしています。
マルチカレンシー口座は安全?
銀行の場合
銀行のマルチカレンシー口座は安全なのでしょうか?結論から言えば、日本の銀行では円預金と同じほどの安全とは言えなさそうです。
日本の銀行では、外貨預金は預金保険制度の対象外になります。預金保険制度とは「ペイオフ制度」とも呼ばれており、万が一金融機関が破綻した場合に預金などを保護する仕組みです。
定期預金や利息の付く普通預金などは、預金者1人当たり、1金融機関ごとに元本1,000万円(外貨預金は除く)までと破綻日までの利息などが保護されます。 逆に言えば、それを超える部分は、破綻した金融機関の残余財産の状況に応じて支払われるので、全額が戻ってくるとは限りません。
外貨預金は金額に関わらず、この預金保険制度の対象外なので、元本1,000万円を超える円預金と同様に最悪全額戻ってこないかもしれません。したがって、銀行が破綻するリスクが一般にそんなに大きくないとしても、日本では一つの銀行に多額の外貨預金はリスクが高いと考えられます。銀行の破綻リスクを考慮して複数の金融機関に分けておくのが望ましいでしょう。
Wiseの場合
意外に思われるかもしれませんが、「預けた外貨が保護される」という意味では銀行よりもWiseの方が安全性は高そうです。というのは、Wiseのような資金移動業者は、ユーザーの資金の100%以上の額を「履行保証金」として供託しなければならず、仮にWiseが破綻したとしてもユーザーのお金はその供託金で補償される可能性が高いからです。
Wiseは世界中で金融サービス提供のためのライセンスを取得しています。Wise(旧Transferwise)は英国にグループ本社を置くグローバル企業で、日本・英国・米国を含む世界各地で送金・マルチカレンシーウォレットサービスを提供しています。世界中でシームレスなサービスを提供するために日本・英国・米国を含む世界各地でライセンスを取得し、世界中の金融当局の監督を受けています。
Wiseの日本法人であるワイズ・ペイメンツ・ジャパン株式会社も日本でのサービス運営に必要なライセンスを取得しています。関東財務局により第一種資金移動業者として認可されています。日本国内において銀行以外の事業者が送金をはじめとした為替取引をビジネスとする場合、資金決済法により資金移動業者としての登録が必要です。ちなみに日本に住んでいる皆さんが使い慣れているQR決済アプリ(LINE PayやPayPayなど)も資金移動業者として登録されています。
資金移動業者は、送金途中にあり滞留している資金の100%以上の額を「履行保証金」として供託して保全しなければならないと定められています。少しややこしいのですが、Wiseのマルチカレンシー口座内にある資金は「送金途中にあり滞留している資金」であるとみなされます。マルチカレンシー口座内の資金についても海外送金用の資金と同様に供託によって保全されています。
つまり、万が一資金移動業者が破綻したとしても、事業者がルールに従っている限りはユーザーが送金中のお金については別に保全されているので、Wiseに預けた資金がなくなる心配はありません。このようにWiseは銀行ではありませんが、銀行とは違った仕組みでユーザーの資金は保護されています。
結論
複数の通貨を同時に1つのアカウントで管理できるマルチカレンシー口座には多くのメリットがあります。ただ銀行によって提供しているサービスが大きく異なっており、自分のニーズに合ったサービスを提供しているのか事前にしっかり確認することが大事そうです。この記事は皆様のマルチカレンシー口座選びに役立てば幸いです。
よくある質問
マルチカレンシー口座とは、複数の通貨を同時に1つのアカウントで管理できる口座のことです。日本の銀行ではこの名前を使わず単に「外貨預金」として提供されていることもあります。
米ドルで送金した人は為替レートのいい時(円高の時)に日本円から米ドルに両替しておけば、あとで送金すれば送金額を節約することができます。これとは逆に円高の時に受け取った米ドルをより円安になってから日本円に両替することで日本円ベースでの受取額を増やすことができます。
SMBC信託銀行やソニー銀行など外貨預金に力を入れている銀行ではすでに日本円の口座を持っていればオンラインで口座開設できることが一般的です。
Wiseに預けた資金は供託されて保全されており、万が一Wiseが破綻してもその資金は返ってくる可能性が高いと言えます。