海外資産を遺産相続する方法とは?手数料や上限、税制について解説!
海外在住の親戚がいたり、両親が海外の不動産に投資していたりすると、思わぬタイミングで海外資産を相続することがあるかもしれません。そうなった場合には、日本にある資産を相続するのと何が違うのか、税制上の違いはあるのか、などいろいろ気になることはあるでしょう。そこでこの記事では、海外資産を遺産相続するときの手順やその際にかかる税金など、日本の税制と照らし合わせながら詳しく解説していきます。
また、多額の海外送金に便利なWise(ワイズ)などのオンラインプロバイダーも合わせてご紹介していくので、遺産相続などで海外送金を予定されている方はぜひ参考にしてみてください。
海外資産を遺産相続することになったらどうなる?
海外資産を含む遺産相続は「国際相続」と呼ばれます。国際相続には「財産が複数国にある場合」「相続人もしくは被相続人が海外在住の場合」などが含まれます。国内の相続と比べて国ごとの相続制度・法律・税制度が異なるため、手続きや税務対応が複雑になりやすいので注意が必要です。
詳しい内容を見ていく前に、まずは海外資産を遺産相続する際のステップを見ていきましょう。ケースバイケースではありますが、海外資産の遺産相続は主に下記の手順に従って進めていきます。
相続発生の確認・通知
被相続人の死亡が確認された時点で相続は発生します。その時点から、国内・国外を問わずすべての財産及び負債が相続の対象となります。
国内外の資産の把握
銀行口座、株式、不動産などあらゆる資産を調査してその有無を明らかにします。場合によっては、海外の登記機関などに問い合わせが必要なこともあります。
現地の関連法を確認
海外資産がある場合には、その国で定められている相続に関する法律を確認します。基本的には被相続人の本国のルールが適用されますが、中には例外もあるため慎重に確認しなければなりません。必要な場合には専門家に指示を仰ぎましょう。
必要書類の準備及び相続人間で協議
相続に必要な各種書類を国内外で収集し、相続の手続きをするための準備を整えます。それと並行して相続人同士で遺産の分割について協議します。
税務処理及び資産の整理
国内外の税制を確認し、二重課税を避けるための必要な手続きを踏みます。
海外資産を日本に持ってくる方法とは?
海外の預金や投資資産などを日本に移す方法はいくつかあります。どの方法を選ぶ場合でも、安全性、コスト、そして税務報告の3点を考慮することが重要です。
国際送金(銀行送金)
海外の銀行口座から日本の銀行口座へ送金する方法です。最も一般的な方法と言えるでしょう。
海外送金サービスを利用する
オンラインで送金できるサービスを利用してお金を移す方法です。Wise(ワイズ)やRevolutといったオンラインサービスを使うと、銀行での国際送金よりも手数料を抑えられる場合があります。
海外に維持したままにする
もし今すぐに必要な資金ではないなら、必ずしも遺産を日本に移す必要はありません。ただし、銀行預金の場合は口座名義人が亡くなったあとは日本と同じく口座が凍結されることがあります。すぐに凍結されるのか、それとも猶予があるのか、などは国によって変わるので、よく調べなければなりません。
海外資産を日本に送金するのにおすすめな方法!
上述のように、遺産相続の際に海外送金サービスを使えば銀行の国際送金よりも手数料が抑えられることがあります。この段落では、その中でも特におすすめの4つのサービスについてご紹介していきます。
送金手数料 | 為替レート | 送金上限額 | 送金日数 | 安全性 | |
|---|---|---|---|---|---|
0.73%~ | ミッドマーケットレート | 1億5,000万円(※1) | 即時(※2) | 関東財務局認可 | |
Revolut | 無料(※3) | 独自レート | 100万円 | 数時間~72時間 | 関東財務局認可 |
499円 | 4%(※4) | 100万円 | ~5営業日 | 関東財務局認可 | |
SBIレミット | 460円~ | 独自レート | 100万円 | 10分~ | 関東財務局認可 |
2025年10月14日現在、(※1)送金方法によって異なる、(※2)取引内容によって異なる、(※3)中継銀行手数料が発生する可能性あり、(※4)受取人負担の場合は3%
いずれのプロバイダーも、関東財務局に認可を受けておりセキュリティ面については安心できるといえるでしょう。送金日数についても早いもので即時、遅くとも5営業日以内に完了するので、スムーズな取引が期待できます。
一方、送金手数料及び為替レートについてはプロバイダーによって違いがあります。この2つによって手数料の総額が変わってくるので、特に注意深く比較する必要があるといえます。PayPalは送金手数料が1つの取引につき499円と非常に安く見えますが、実は1回あたりの取引金額の上限が100万円となっています。遺産相続の場合は送金金額が高額になることも考えられますが、その場合は取引を何度かに分けて行わなければならず、結果的に手数料が積み重なっていきます。
それに対し、Wiseの場合は送金の上限が1億5,000万円と高額に設定されています。いちいち分けて取引をする煩わしさがない上に、手数料も0.73%~と良心的です。このように、それぞれのプロバイダーに一長一短がありますので、よく見比べることが重要です。
Wise(ワイズ)
Wiseは外貨両替の為替レートを実際の市場レート(ミッドマーケットレート)に設定しています。外貨両替にかかる手数料を最大限抑えており、お得に海外送金が可能です。銀行振込などの方法であれば1億5,000万円までの高額送金が可能です。
Wiseは関東財務局に第一種および第二種資金移動業者として登録、認可を受けている金融サービスです。また、2段階認証や生体認証などを駆使してアカウントのセキュリティを守っています。
Wiseを使って海外の遺産を日本に移す方法とは?
Wiseを使って海外の相続資金を受け取る方法は主に下記の2つです。
国際送金方式(送金元→Wise→日本の銀行口座)
送金元からWiseに対して送金を行い、Wiseが日本の銀行口座へ振込を行う方法です。
Wise のマルチカレンシー口座を用いて受け取る方式(送金元→Wise)
送金元からWiseに対して送金を行い、その資金をそのままWiseの口座に入れておく方法です。Wiseはマルチカレンシー口座と呼ばれる、複数の通貨を保有・管理できる口座があります。相続した資産をそこに入れておき、必要に応じて引き出すことが可能です。
Revolut
Revolutもまた、マルチカレンシー口座で複数通貨を保有・交換できるサービスです。海外送金にも対応しており、なんとその送金手数料は無料です。取引内容によっては中継銀行手数料がかかることはありますが、手数料を安く抑えることができます。ただし、プランによっては月額料金が発生することがあります。
Revolutでは1回につき最大100万円まで海外送金ができます。関東財務局に第二種資金移動業者として認可されており、セキュリティ面も安心です。
Revolutを使って海外の遺産を日本に移す方法とは?
Revolutを使って海外の相続資金を受け取る方法は、基本的にはWiseと同様です。
国際送金方式(送金元→Revolut→日本の銀行口座)
送金元からRevolutに送金を行い、Revolutから日本の銀行口座へ振込を行う方法です。
Revolutのマルチカレンシー口座を用いて受け取る方式(送金元→Revolut)
送金元からRevolutに送金を行い、そのままRevolutの口座に入れておく方法です。アカウントに入っている資金は送金や支払いに使用できます。
PayPal
オンライン送金サービスの先駆けともいえるPayPalは、1998年の設立以降さまざまな金融サービスを展開しています。日本では22の通貨に対応しており、1回につき100万円までの送金が可能です。送金手数料は1回につき499円と一律ですが、海外送金の際には為替手数料3~4%がかかります。
PayPalは独自の不正防止モデルを構築しており、すべての取引を24時間365日モニタリングしており、セキュリティ面も万全です。ただし、PayPalで送金できるのはPayPalユーザー同士のみです。
PayPalを使って海外の遺産を日本に移す方法とは?
上述の通り、PayPalの送金はユーザー同士のみで可能です。そのため、海外の資金を移す方法としては相続元国でPayPalアカウントを持つ人が自身の口座に入金し、それを遺族などの受取人のPayPalアカウントに送金を行う方法が考えられます。自分のアカウントに入っている資金は銀行口座へと移すことが可能です。
SBIレミット
SBIレミットは、住信SBIネット銀行系列の国際送金サービスで、200を超える国や地域へ送金が可能です。 送金手数料は460円~と、業界最低水準を掲げています。ただし、取引内容に応じて手数料は変わります。
1回に送金できる金額は100万円相当額以下です。国や地域によって上限額は変わる可能性があるので、事前確認が必要です。ちなみに関東財務局に登録されている金融業者であり、国内外の法律枠組みに則った運用を行っています。
SBIレミットを使って海外の遺産を日本に移す方法とは?
SBIレミットを使う場合、まず送金元からSBIレミットのアカウントに送金してもらい、そのあと登録している日本の銀行口座へと出金します。この方式では、受取人は日本の銀行名、支店名、支店コード、口座番号、銀行コード、SWIFT/BIC などの口座情報を SBIレミットに提供する必要があります。
遺産相続にまつわる日本の相続税について
この段落では、日本の相続税のルールを見ていきます。相続税に関する一般的な決まりに加え、海外資産を遺産相続するときに特に注意しておきたいポイントをまとめています。
相続税を払わずに済む上限金額とは
基本的に、資産が国内にあろうと国外にあろうとそのすべてが相続税の課税対象となります。ただし、基礎控除が設定されており、それを超えない分については課税はされません。基礎控除額は下記の計算式で計算されます。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば法定相続人が4人の場合を見てみましょう。その場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×4人=5,400万円、となります。基礎控除額を超えない範囲の相続であれば、相続税は発生しません。
海外資産を引き継ぐ際の日本の税務上の影響とは
国外に資産を有する場合、年末時点でその合計額が5,000万円を超える場合には翌年6月30日までに「国外財産調書」を提出しなければなりません。ただし、それが相続によって取得した財産である場合、その年分の国外財産調書には含めなくてよいことになっています。例えば2025年に海外資産を相続し、その価額が5,000万円を超える場合でも2026年6月30日までに提出する国外財産調書には記載しないでいいということです。
仮に、他に海外資産を持っていなければこの場合はそもそも提出の必要がありません。翌年以降、つまり2026年の年末時点でその相続した海外資産持ち続けているのであれば、そのときには国外財産調書を提出することになります。
遺産相続の際に二重課税を防ぐ方法とは
海外資産を相続する際に気を付けたいのが二重課税です。実は、相続元の国で相続税に相当する税を払った場合には、一定の要件のもと日本の相続税から外国税額控除を受けることができます。これを知らずにいると、相続元の国ですでに相続税を支払ったのに、日本でももう一度相続税を支払う、ということになりかねません。
なお、これは避けるためには申告の際に相続税申告書<第1表>にある「外国税額控除額⑰」を埋める必要があります。ここには、申告書<第8表>の1、各人の「⑧欄の金額」を転記します。
海外資産を遺産相続する際のルール
上述の通り、国際相続の際には相続に関わる国すべての税制について調べなくてはなりません。相続元の国、そして相続人が住んでいる国によってそのプロセスやルールはいろいろと変わります。そのため、国際相続をするときには慎重にその手続きを進めなければなりません。
海外資産を引き継ぐときに相続税は発生する?
基本的に、日本に住所を有する人が遺産相続をするときには日本の相続税の課税対象となります。その場合には国内、国外のいずれの資産も含むすべての財産が課税対象です。一方、相続人が日本に住んでいなくても、日本国籍で、10年以内に日本に住所を有していたことがある場合には取得したすべての財産が課税対象となります。
税務署への報告は必要?
海外資産を含む遺産を相続し、その額が基礎控除額を上回るようなら申告が必要です。なお、申告は相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10カ月以内にしなければなりません。また、前の段落でも触れたとおり一定額以上の国外資産を持っている場合には国外財産調書の提出も必要になります。
多額の現金による遺産を預け入れる方法
被相続人が海外の銀行口座に現金預金をしている場合には、相続後にその現金をどうやって日本へ運ぼうかと悩むこともあるでしょう。現金を持ち込む手段としては主に下記の3つが挙げられます。
現金をそのまま持ち運ぶ
銀行の国際送金を使う
海外送金サービスを使う
現地へ足を運び、口座からお金をおろして現金を持ってくることもできます。ただし、100万円を超える現金を持ち出す、持ってくる場合には申告が必要です。現金を持ち運ぶリスクを考えても、あまり現実的とは言えないでしょう。
銀行の国際送金サービスを使えば被相続人の口座から直接相続人の口座へとお金が移せるので、スムーズに手続きが進みます。ただし、銀行の国際送金は手数料が数千円~とかかることがあり、金額が大きくなれば為替手数料もその分上がるのが一般的です。
遺産相続の海外送金による手数料を抑えたいなら、先に紹介したWiseなどの海外送金サービスがおすすめです。特にWiseは1億5,000万円までの高額送金に対応しているので、遺産相続など大きな金額を動かす必要があるときにも使いやすくなっています。
海外不動産を売却する方法
海外の不動産を遺産相続した場合には、それを売却して現金化しようと考える人も多いでしょう。その場合には、一般的に下記の手順が必要です。
不動産売却のノウハウを調べる
まずはその国で不動産を売却するときのイロハを調べます。税制や売却のステップを確認し、スムーズに手続きができるよう下調べを進めます。
現地業者にコンタクトをとる
実際に売却の手続きを進めるにあたっては、現地の不動産仲介業者やエージェントに依頼するのが一般的です。信頼できる業者を探し、売却手続きを進めていきましょう。
必要に応じて納税する
売却によって得た利益は課税対象となることがあります。詳しくはエージェントに聞くなどして、納税漏れがないようにその国の税制をしっかり確認しましょう。
資金を移動する
納税も終わり、利益額が確定したら資金を移動します。先に紹介した銀行の国際送金やオンライン海外送金サービスを使って、資金を動かします。
海外不動産を売却する際にかかる税金
上述の通り、不動産売却時にはその利益に対して税金が課されるのが一般的です。取得費や雑費などを計上したうえで売却益を確定し、それに対して一定の譲渡所得税が課されます。その税率や控除額などは国によって変わるので、相続元国の税制をしっかり確認しましょう。
ちなみに、日本の税制では相続した不動産を売却する際、支払った相続税の一部を取得費用として計上できる制度があります。日本国内の不動産を売却するときにはこれにより譲渡所得税が軽減される可能性があります。海外の不動産売却の場合は、その国に同様の制度があれば適用の可否が異なります。詳しくは仲介業者やエージェントに確認しましょう。
まとめ: 海外資産を引き継ぐのにオススメな方法
以上見てきたように、海外資産を遺産相続する「国際相続」の場合、国内資産を引き継ぐときとは少し異なる手続きやプロセスが求められます。特に下記の点は押さえておく必要があるでしょう。
国内、国外ともに相続資産は相続税の対象
基礎控除額までは課税対象外
外国税額控除で二重課税を阻止
(必要に応じて)国外財産調書を提出
資金の移動にはオンライン海外送金サービスがおすすめ
多額の資金を国外から国内へと移す場合には、WiseやRevolutといったオンラインプロバイダーが特におすすめです。移動にかかる時間を短縮できるだけでなく、手数料も安く抑えられることがあります。海外の不動産売却などで多額の遺産を相続する場合には、ぜひ検討してみてください。
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よくある質問とその回答
日本に居住している人が遺産相続をする場合には、国内と国外どちらの資産も相続税の課税対象となります。
日本に居住している人の場合は国内、国外いずれの遺産相続も課税対象になります。ただし、基礎控除額を超えない分に関しては税金を支払う必要はありません。
利用するサービスによって変わります。銀行の国際送金を使う場合には数日~かかることがある一方、Wiseなどのオンライン海外送金サービスであれば即時完了することもあります。